第14話

空中でぶつかった視線。


女は黒い着物に身を包み、シンプルにセットした栗色の髪は高い位置でまとめてある。



葬式に相応しい正装は女の表情を凛と際立たせるが、それでも着物を脱げば年相応だろう。




たぶん、30歳前後。


目鼻立ちは整ってるみたいだけど、でも無愛想な表情が足を引っぱってか、"堅苦しい"っていうのが印象だ。





「…誰?、って顔をしてるみたいだけど。」



『えぇ、ですね。』




もちろん面識などあるはずがない。


おそらく母親の親戚にあたる人物なんだろうけど、でもカケオチで生まれてきた俺には、そんな繋がりなど皆無だったから。



俺がシレッとした様子でそう言えば、女の眉間にはさらにシワが寄る。





「…通夜の夜、挨拶くらいはしたつもりだったんですけど。」



『あー…、と、』



「別にいいわ。どうせ覚えてないんでしょう?あなた、ずっと上の空みたいだったし。姉さんが死んでからそんなに日が経ってないものね。」




言葉を濁した俺に、女はわずかに目線を伏せた。


唐突に"姉さん"と刻んだ唇。



その唇が柔らかな弧を描いているのを、俺は見逃さなかった。





『…ねぇ、さん…?』

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