第13話
心と身体がバラバラになってしまったような、そんな感覚に襲われた。
思った以上に精神的ショックが大きいのかもしれない。
案外やわだね、俺も。
そんな自分に遠慮することなくタメ息を吐き、何気なく宙を仰いだとき。
ふと床の上を滑るような、足音らしき音が聞こえた。
『…、』
なんだ?
そう思うよりも先に、陽射しだけだった部屋には人工的な明かりが溢れ出す。
無意識に顔を上げ、見つめたその先。
開いたふすまの隙間から、光の滑った廊下が見えた。
「…、まさか、一晩中そうしてらしたんですか?」
怪訝そうな表情を浮かべ、ふすまに手をかけた女が俺を見下ろしている。
一晩中、とは、おそらく壁に寄りかかった体勢のことを言っているのだろうか。
夜が明けた今も、部屋の片隅に用意された布団は未だ綺麗に畳まれたままだったから。
そこに使用された形跡などは残されていない。
あからさまに寄った眉。
そこに、せっかく用意したのに。という意味がこめられているのは明らかだった。
『すみません。せっかく用意して下さったのに。』
俺も一応は窮屈な言葉遣いを使えるらしい。
話し相手といえば、たいがいリナか客くらいだから忘れてたけど。
立ち上がるのは億劫で、俺は失礼だと思いながらも、部屋の入口に立っている女を座ったまま見返した。
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