第12話

――…ちっ、と舌打ちをした。


睡眠をとったせいか、余裕のなかった思考にはわずかな隙間が出来たような気がする。



そうなったとき、思い起こされるのは昨晩のこと。





[一人にさせて。]



[え…?]



[先、帰っていいから。]




完全に八つ当たりだろ。


あいつは俺を心配してずっと傍ついててくれただけなのに。



俺はもうすでに乱れきっている髪に指を通し、それをさらにグシャグシャと掻き乱した。




空虚感、脱力感、後悔、いろんな糸が複雑に絡み合ってくる。




面倒くさいって思う半面、リナのことだけはこのままじゃマズイと思った。





『…リナ、』




小さく名前を呼ぶ。


もちろん反応はない。



声は静けさに溶け、ひんやりとした和室特有の冷たさが頬を撫でる。




一刻も早く会わなくちゃいけないって思うのに、リナを心配する想いとは裏腹に、壁に預けた身体はまるで鉛のように重かった。




立ち上がりたいのに、身体はなかなか言うことをきこうとはしない。

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