第11話

知らない間に意識を手放していたらしく、次に目を開けたときにはもう、太陽の日差しが薄い障子紙を淡く透かしていた。


ずっと暗闇にいたせいか、慣れない明るみに軽い目眩を覚えてしまうのは仕方がない。



俺は小さく息を吐き、無意識にスーツのポケットの中に手を突っ込んだ。





『あー…、そか。』




ふと呟いて、迷うことなく掴んだ長方形の箱を、結局は取り出すことなく手放した。


忘れてた。



灰皿の設置されていないこの部屋が禁煙だってことを。




まさに昨日、同じ動作を繰り返していた自分が笑える。





『…、』




なんて、実際はそんな気力すらないけど。


ただでさえ低血圧なのに。



煙草の苦味にありつけない身体は未だ眠気を訴えてくる。




俺は壁に背を預けたまま、天井に張り巡らされた木目をボーッとした思考のまま見つめた。





一体、何時間こうしていたのだろうか。


障子の向こう側は明るく、少なくとも当に夜が明けてることを教えてくれる。



あげく、座ったまま眠ってしまったのか、身体のいたるところがギシギシと痛む。




が、とりあえずは"よし"としよう。





[寝てね?]




リナとの約束は守った。


じゃあ、あいつは?



そう思ったが、でもすぐに考えるだけ無駄だと思って止めた。




蘇るのは、リナの悲しげに揺れた瞳。強がり。





『…寝れるわけねぇじゃん。』

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