第8話

第一印象は、暗い奴。


や、俺もたいがい人のことは言えないけど、でも初めて会ったときの冷たい色をした瞳だけは酷く印象的だった。



ダークブラウンの髪を胸元まで伸ばし、Tシャツにショートパンツという格好は年相応なのに、俺たちを見据える瞳だけはどこか大人びている。





まぁ、母親がこれじゃあな。そう思ったけど、でもガキのくせにっていうのが本音。


母親の再婚なんてどうってことないと言った様子で、突然、転がり込んできた俺たちを、里菜子という妹は表情を崩すことなく受け入れたから。



まるで自分を見ているようで、俺は少しだけムカついた。





「――…あま兄?」




ふとリアルに聞こえた声に、フィルターががった思考がうっすらと晴れていく。


無意識に顔を上げれば、ものすごく近い位置で里菜子が心配そうに俺を見つめていた。



一瞬、その近すぎる距離に、喉がクッと締まったのが分かる。






『あー…』




一つのベッドで寝てるくせに。


――…なにをいまさら。





「…、大丈夫…?」



『…あぁ、平気。』




俺は頷くフリをして、リナとの距離をとった。


平気。と言えば、リナも少しは安心してくれたのか、前のめりになっていた身体がスッと後ろに離れていく。



その離れゆく身体を見送ったとき。




ひんやりとした空気が、二人の距離をさえぎるようにして流れ込んでくる。

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