第6話
ふすまの擦れる音に混じり、耳はおそらく一番聞き慣れているであろう声をキャッチする。
俺は無意識に顔を上げ、たたみの上を辿る筋を目を追えば、そこには見るからに不安げな表情を浮かべた里菜子がわずかに息を乱して立っていた。
…いた。と呟いたあたり、おそらく俺のことでも探していたのだろう。
視界の片隅に見えたワンピースがふわりと揺れて、『…、』反応するよりも先に、入口に立っていた里菜子が俺との距離を早々と詰めてくる。
「…探した。」
俺を見下ろす姿を見つめながら、やっぱりな。そう思った。
自意識過剰でも、里菜子が俺から離れることは絶対にありえないから。
俺が、そうさせたから。
『ん、ごめんね。』
「…親戚の人とか、広間に集まってたみたいだけど、あま兄は行かなくてもいいの?」
座ったままの俺に合わせ、里菜子も目線の高さを合わせるようにして腰を落とす。
普段、リナがスカートを履くことはほとんどなかったため、こんなふうに制服以外で女らしい服装をしてるのは本当にめずらしい。
が、リナに"黒"は似合わないと思った。
母親に捨てられ、ずっと寂しい想いをしてきたリナに、出来ればこんな服着せたくなかったのに。
『行かない。つか、普通歓迎されないだろ。こんな、娘とカケオチした男とのガキなんて。』
「またそう言う…」
『リナもごめんね。葬式の手伝いなんかさせちゃって。』
なにか言いたそうなリナを無視し、俺はさえぎるようにして言葉を紡いだ。
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