第4話

ゆっくりと息を吐けば、真新しい深緑の匂いがした。


たぶん畳の匂い。


…どこだ?ここ。そう思ったけど、でもかろうじてこの8畳ほどの部屋に通されたのを覚えている。


俺はポケットの中の煙草を求めたが、でもすぐに灰皿がないことに気づいて舌打ちをした。



酷い喪失感。


壁に背中を預け、畳の上に足を投げ出した俺は、ふとぼんやりとした頭で思考を巡らせる。


4歳だった頃の記憶は薄れ、今ここにいる自分は18歳の姿をしている。


当然だけど、これが現在の自分。



じゃあ俺は今、ここで一体何をしているのだろうか。


目に映ったのは、部屋の隅に用意された布団が2組みと、色褪せた畳みが敷き詰められた和室だけ。


すっかり陽の落ちた部屋は暗く、閉めきったままの障子ごしには欠けた月が透けて見えた。




『あー…、そか。』




この見慣れない部屋は俺の部屋でもなんでもない。


他人の部屋。


そう認識したのと同時に、忘れようとしていた記憶が決壊したダムのように押し寄せてくるから敵わない。




『思い出した…』

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