第7話

[猫…、か。]




それもようやく目を開け始めた子猫。


捨てられた猫。



俺はおもむろにダンボール箱の前にしゃがみ込み、持っていた傘を子猫のほうへ傾けた。


突然止んだ雨に、子猫は垂れた尻尾を一回だけ跳ねさせる。わずかに持ち上がった尻尾は、空中で小さな弧を描いてパタリと落ちた。


やがてかぶりを振って雨に濡れた毛並みを欝陶しげに払うと、今度は身を折り曲げてうずくまる。




微かに震えた毛並み。


寒いのだろうか。



その動作をジッと眺めていたとき、ふいに聞こえてきたのがさっきの言葉だった。




[猫…、寒そう。]




もう一度呟きながら、なんの躊躇いもなく俺の隣にしゃがみ込む。


見れば、俺と同じ学校の制服を着た女生徒だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る