第6話
[猫…、寒そうだね。]
遡ること一年前。
学年も二年へ上がり、梅雨も明けて間もなかった頃。
初夏の彩りを見せ始めた世界は、久しぶりに雨の匂いに濡れていた。
ザァザァと降りしきる雨がアスファルトを叩く中、俺は一匹の捨て猫を見つけた。
[あー…、れ。]
学校帰り、電信柱のふもとに無造作に置かれたダンボール箱は見るからに不自然だった。
茶色いそれは水気を吸って、ふにゃりと萎れている。
晴れていたら素通りしていたかもしれない。もしかしたらダンボール箱の存在に気づきすらしなかったかもしれない。
俺は肩に預けた傘を右手で持ち直し、ダンボールの中身を前屈みになって覗いた。
ザァザァと冷たい雨音に混ざって、みゃあと、弱々しい鳴き声が聞こえる。
[――…、]
あぁ。
やっぱりな、そう思った。
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