第4話

腐れ縁つうか、悪友ってやつ?


とにかく昔から面倒かけられっぱなしの俺は、こいつの前だとどうにも素が出てしまうらしい。


まぁ、佐野にも気にした様子はないし、むしろ楽しんでいるようにも見えるから、だから俺もあえて冷たく接することをやめない。


だからお互い、いい意味でも悪い意味でも気をつかわなくていい、ラクな存在でいられるのだ。




「だいたい、機嫌を悪くする要素なんて、ひとつもなくね?」



『その要素にお前が入ってないとでも思ってんの?』



「いやいや、違くてさ!せっかく愛しの香澄チャンと同じ委員になれたっつうのに、なんで浮かない顔してんのー?って意味じゃん。」



『…名前で呼ぶな。』



「はいはい、須藤サンね。」




ジロリと睨んでやっても佐野が臆することはない。


ただ両手を上げて"降参"のポーズをとり、わざとらしく言い直す。


慣れてますといわんばかりにあしらわれるのは不愉快だけど、でもいちいち突っかかるのも面倒くさい


俺は頬杖をつき、自分の手をぼんやりと見つめた。




[よろしくー!]




そう言って、俺から差し出した右手。


さっきのHRで同じ委員会に選ばれたとき、俺は一生分の勇気を使い果たすかのような勢いで、この右手を彼女へと差し出したのだ。

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