第14話

「夏海…」




あたしは前を見据え、小さな声で夏海を呼んだ。


両手を合わせ、夏海を想う。



思い出は捨てない。


悲しみも忘れない。


夏海と過ごした夏も心に刻む。



けど、もう振り返らない。


振り返っちゃいけない。


背中を押してくれたのは、導いてくれたのは、蜃気楼のような幻を見せてくれた夏海自身だ。



草木がまた、ザワリと揺れる。




「香澄」




圭吾は一通り片付けを終えると、


「行こうか」


あたしを見つめるなり優しく微笑んだ。




今度こそ幸せになるよ。




-End-

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