第12話

「……、」




結婚を誓い合った人については否定しないんだ…


引き合いに出したのはあたしなのに、さりげなく交わされてしまうとやっぱり面白くない。これでは肯定してるのと同じではないか。


これが圭吾の言う"嫉妬"という感情なら、圭吾が過去を羨ましく思ったのも、何となく分かる気がした。




「香澄」




そんなことを考えていたため、心を読まれてしまったのだろうか。


ふと名前を呼ばれ、おもむろに肩を抱かれた。




「…圭吾?」


「しっ、黙って」




そのまま顔を傾けた圭吾がゆっくりと近づいてくる。


キスされる――…と、どこか冷静な頭で目を瞑った。


ザワ…ッと、暖かな風が草木を揺らし、霊園にはまるで世界から切り離されたかのような静寂が生まれる。けれど待ち焦がれる感触はいつまで経っても訪れなかった。

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