第7話

あたしと彼は同じ広告会社に勤めていた。


いわゆる"社内恋愛"というやつで、彼はあたしが所属する職場の上司だった。



最初は仕事の話をするだけの、ごくごくありふれた上司と部下という関係。




それがちょっとした世間話をするようになり、あたしは彼のコーヒーの好みを自然と把握した。





普段はパンチのきいたエスプレッソ。


疲れたときは、それにたっぷりのミルクを加えるのがオススメなんだとか。



高そうなスーツを身にまとい、いかにも"ブラック"の似合いそうなその顔で、実はカフェオレのほうが好きなんだとウインクをする彼は、あたしの抱いていたイメージをいい意味で裏切ってくれた。




そんな彼に食事へ誘われたことをキッカケに、こうやって同じベッドで朝を迎えるのも、もう日常と呼べるくらいにまでなっていた。





けれど、彼が"冒険"に片足を突っ込んでくれることはない。


仕事でも、ベッドの中でも、優しく包み込んでくれる彼はどこまでも堅実なのだ。



そこが彼のいいところでもあり、悪いところでもある。

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