じゅーはち

第30話

「ぅ………?」




目が覚めると、見知らぬ天井が見えた




「………ここどこ?」


「此処は教会ですよ」




思ってもみない回答に声のした方を見ると、そこに神官がいた


上半身を起こしながら、率直に尋ねる




「………?


あんたは?」


「私はアリョーシャです


貴方が道端で寝ておられたので、拾って差し上げました」


「え?


あ、ありがとうございます?


ディックっす」




なかなかの上から目線発言に、吃りながらも一応礼を言い、名乗る




「そう、ディックさんですね


何故道端で寝ていらしたのですか?」


「あ、いや、寝てたんじゃなくて力尽きていつの間にか気を失っていただけっす」




ざっくり説明して立ち上がると、身体がフラリと揺れ

アリョーシャの方へと倒れ込んだ


そしてそれをあっさりと避けたアリョーシャ


それにより、床と熱いキスを交わす事となったディック


ガシャーンッ と耳障りな鎧のぶつかった音が教会内に響いた




「ぶふぅっ!!?


…………ぃ…いってぇぇー……」




思いっきりぶつけた顔を擦りながら上半身を起こすと、

上から失礼な言葉達が降ってくる




「何やってんですか


そんなに床がお好きなら最初から床に転がして差し上げましたのに」


「ちょっ、待ってアリョーシャさんっ!?


俺、別に床好きじゃない!


さっきのは力が入らなかっただけ!!」




床が好きなどと、謂われのない事に必死に言い募ると、

アリョーシャに冷たい瞳で笑われた




「貴方の言動を見ているとそうは見えないのですけれどね?」


「止めて!!?


俺の心抉らないで!!


俺に何の怨みがあるの!!?」


「別に怨みなどありませんよ?


教会内に運ぶのが思った以上に重かった事に苛ついてなどいないのですから」




にっこり笑顔で言うアリョーシャに何故か背筋が寒くなったディック


よくは解らなかったが、本能的に生命の危機を感じ、即座に土下座した




「すいませんでした!!」




ピシッ と、綺麗な土下座だったそうな

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る