じゅーなな

第29話

「……お前、もうちょいそっち行けよ


濡れんだろ、俺が」


「いやいや、俺も濡れるから無理だって」


「………チッ」


「舌打ちすんなよ、ねーこざーわくん?」


「うるさい、キモい、喋んな」


「今日も辛辣ぅ♪」


「……………」


「あっ、ちょっ、シカトしないで瑠夷くん」


「喋んな息すんなばーか」


「おぅふっ」




雨の中、1つの傘の下で繰り広げられている会話


今日は突然の雨により、2人は最後の1本の傘を借り、

猫沢 瑠夷(ネコザワ ルイ)と、水町 白狐(ミズマチ ビャッコ)は相合い傘をしていた


少し沈黙が降りて、白狐が瑠夷の肩をつついた




「………、っ!?」




何? と訊こうとして瑠夷は焦った


振り向いたら白狐の顔が、後約数㎝という所まで近付いていたからだ


瑠夷は雨に濡れる事も厭わず仰け反り距離をとる




「……お…前、いきなり何すんだ!


気持ち悪い!!」


「いやぁ、あそこの多分腐女子さんからの視線がさぁ、凄かったからさぁ


ちゅーのフリ?」




瑠夷の死角を指差し、そう嘯く白狐




「百篇死ねクソが」


「そんな怒んないでよぉ


リクエストにお応えしただけじゃん?」


「もう死ねなんて言わない


俺が今すぐここで殺ってやるよ」


「え?


ヤるって?


瑠夷くんってばだいたぁんっ」




アホ過ぎるる会話に、ため息が溢れる




「……………ハァ」


「ため息吐くなしっ」


「……………」


「あれ、シカト?


ヤだ俺、泣いちゃう」


「……………」


「……………さーせんっした」


「……………フンッ」




小さく鼻を鳴らし、白狐が持っていた傘を奪い逃走した瑠夷



翌日、白狐は風邪で学校を休んだそうな

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