じゅーいち

忘れられない記憶

第16話

友達からのリクエストで、ファンタジーものです




――――――――――




「えーっ


また遊べないの?」




少年、伏見 九郎(フシミ クロウ)は眉を八の字にしてもう1人の少年、木更津 宗吾(キサラヅ ソウゴ)に問い掛ける




「…うん、ごめんね…


父様がしゅぎょーつけてくれるって……」




宗吾もしょんぼりとした面持ちで、九郎にそう告げる




「…そっか…


しゅぎょーだから、しょーがないもんなぁ…


また明日も来るから、しゅぎょーなかったら遊ぼーな!」




ニコッと効果音がつきそうな笑顔で宗吾に約束する




「!


うんっ、ぜったいね!」




そう約束を交わして、2人の少年は別れた



また遊べなかったと、しょんぼり肩を落として帰り道を歩く少年、九郎


寂しいが、今はこれが1番宗吾の為になるのだからと、心の中で言い訳を作る


宗吾の家系は全て陰陽師で、父親は歴史上最強の陰陽師として有名だった


そんな宗吾の父親は、宗吾が3つになると同時に、彼に修行をつける様になった


他の陰陽師達から見て、こんなに恵まれた環境などないだろう


だから、それと同時に宗吾に対して、尋常ではないくらいの期待も寄せられていた


それに応える為、宗吾は遊ぶ時間も我慢して、父親に修行をつけてもらうのだ


一度だけ、宗吾と一緒に居たかった九郎が、宗吾の父親に一緒に修行をつけてもらえるようお願いしたら、素質がないと、門前払いをくらった


その事を思い出すと、胸が痛いからその記憶には蓋をする


とぼとぼと歩いていたら、家の前まで来ていた


九郎は「ただいま」も言わず、黙って鍵を開けて家の中に入る


普通ならそんな事をしたら親に怒られるかもしれないが、九郎に限ってそれはなかった


何故なら、この家には九郎1人しか住んでいないからだ


九郎の両親は、九郎がもっと小さい頃に妖怪に襲われて亡くなっている


こんな事、世間では珍しくとも何ともないのだ


九郎は、もう顔も憶えていない両親の仏壇に手を併せて、ベッドに倒れ込んだ


そして、そのまま眠りについた

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