第17話

――――…


――……


ズズンッ ガッ ガシャンッ




「きゃああああ!!!」




ふと、不吉な音と声で、目が覚めた


厭な地響きと、ヒトの悲鳴と、色んなものが壊されていく音


前にも、聞いた事のある音


凄惨で悲惨な、もう二度と聞きたくなかった音である


九郎は身体が異状なくらい震えていた


思い出してしまったのだ


記憶の奥の奥に仕舞い込んでいた厭な記憶を


両親が妖怪に喰われている処を―――




「っ!


ぁ、―――ぁぁぁあぁぁアアア゛ァア!!」




フラッシュバックする記憶


母親の悲鳴


父親の 逃げろ という叫び


辺り一面を彩る赤 朱 緋 アカ



ガタンッ ドンドンドンッ



不意に、玄関の扉を強く叩く音で身体が強張り、鋭い悲鳴が九郎の唇から漏れた




「――九郎!


九郎!!


居るの!?


九郎、居たら返事して!!」



扉の向こうから、宗吾の切羽詰まった声が聞こえた


それに何故か安心して、扉に駆け寄り、扉を開けると同時に宗吾に抱き着いた



「そ、、ご……っ!」




宗吾の温かい温もりに更に安心して、じわりと目頭があつくなる



怖かった


恐かった


もう、 独り になんて、なりたくない




「良かった、九郎――


九郎は僕が護るからね…!」


「……ん…ありが…と…宗吾……!」




宗吾は九郎の手を強く握ると、走り出した


宗吾に手を引かれ走りながら九郎は目元の涙を拭った

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