第14話

何分か好奇心の赴くままに歩いていると、他の木とは比べ物にもならない程大きな大木を見つけた


わぁ…! と、小さく歓声をあげて、私はその木の根元に駆け寄った


すると、誰かの肩がその大木の向こうから少しだけ見えていた


不思議に思った私は、その人物をみる為に大木の向こう側へ回った


そこには、私と余り歳の変わらないくらいの男の子が居た


彼に興味を持った私は、此方に気付いていない彼に声をかけてみた




「おにーさん、どうしたの?


こんな所に蹲って…」




そう問い掛けてみると、彼は恐る恐るといった体で此方を向き、小さく疑問を口にした




「……だれ…?」




一瞬、何の事だか分からなかったが、名前を問われているのだと気付き、応える




「私、ミト


羽前 ミト(ウゼン ミト)


…あなたは?」


「……ミト………


…僕はヴィルク」


「ヴィルク……?


ヴィルクね、よろしく!」




嬉しくて、そう彼に言うと、彼も少しだけだが笑ってくれた


それが更に嬉しくて、私は更に彼に話しかける




「ヴィルクは、何でここにいるの?」


「――――……」




ピタリと、空気が止まった気がした


何も応えない彼に、私は首を傾げた


一体どうしたのかと


子供とは、とても純粋な生き物である


とても純粋で、でも、それ故にとても残酷で、時としてそれが他人(ヒト)を傷付ける事がある


そして今回も、それだった




「………ごめん、言えない…」


「え…?


ぁ……、そうなんだ…」




心は釈然とはしなかったものの、応えを拒絶されたのだ


だから、それ以上何も言えなかった




「………ミトは ニンゲン でしょ?


早く家に帰った方が良い……」


「え?」


正直、言っている意味が解らなかった


人間なのは 当たり前 で、それ以外なんて、私は知らない


でも、そろそろ母が言っていた3時間が経とうとしていた


だから私は彼の言った通り、家に帰る事にした




「……わかった…


帰るね


また会おうね!」


バイバイと手を振り、元来た道を歩いて帰った


家に帰った時にはもう母は帰ってきていて、外に出た事をこっぴどく怒られた

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