きゅー

八代 直仁(ヤツシロ ナオヒト)物語 ※主人公の名前です←

第12話

友達からのリクエストで、和風ファンタジーです



――――――――――




ギャア ギャア


烏が鳴き、空へと飛び立つ


その烏から抜けた黒い羽が血溜まりの上に落ちた


バシャン


その羽を血と共に踏んだのは、一振りの日本刀と、元は白かったであろう着物をヒトの返り血で朱黒く染めた、まだ年端もいかぬ少年


その少年の瞳は、底冷えしそうな程冷たく、暗く 凍てついていた


表情は 無かった






それから月日は経ち、年端もいかなかった少年も、青年になった


青年は、漆黒の肩くらいまで伸ばしてある髪を上で1つに纏め、黒い着物を着ていた


町行く人は、彼を カラスの様だ と、 不気味だ と、噂していた


今日、彼は大きな樹の上に座っていた


空を見上げると、薄く朱く色付いた大きな満月が妖しく輝いていた


それを見て、彼は樹から飛び降りた


ストン と、ほぼ無音で降り立った彼はスルリと誰にも気付かれる事もなく、闇夜に紛れた






処変わり、そこは大きくきらびやかな屋敷だった


きらびやかな着物を着た “旦那様” は、大きくふくよかお腹を突き出し高らかに笑っていた


“旦那様” は、片手にお酒を片手に女性を従え、とても楽しそうであった


いつも通り楽しい夜を過ごしていた “旦那様” の前に、今宵は無いものがあった


“それ” に驚き、 “旦那様” は大声をあげた




「な…っ、何奴じゃ!!?


いつの間に儂の屋敷に侵入を…!!?」




“旦那様” と、横の女性は大いに驚き “それ” は冷笑と共に色のない、冷たい言葉を吐き出した




「………貴様の知った事ではない


さぁ、地獄でいつかまた再び逢おうぞ…」




肌の色以外、ほぼ全てが黒の青年が “旦那様” の首を真一文字に切り裂いた


横に居た女性の悲鳴が鋭くあがる


それを聞き付け、多数の “旦那様” の部下達が駆け付けてきたが、刻既に遅し


元 “旦那様” は、頭と胴体が既に永遠のさよならをし終わっていたのだから


青年は、愛刀に付いた血を払い、鞘に収めて庭へ飛び出し、外へ出て行く


元 “旦那様” の部下達が追いかけてきたものの、それをものともせず総てを走って振りほどき、易々と逃げおおせる




彼、青年は無事逃げ終わると、また樹の上に上り座る


朱く色付いた満月に、真っ黒い烏が映えた

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