第5話:やっぱり私が先に腐っちゃう。

さて、私とミスター・・・その後、どうなったって思う?


あのね・・・できなかったの。

なんでかって言うと・・・私がシャワーから出来ていたらミスターが、とんづらこいてて、で、テーブルの上に置手紙があって・・・


《昆虫採集に行ってくる・・・まだ心の準備ができてないから夜まで待って

くれる?》


って書いてあった。


「あの野郎・・・逃げたな」

「どうすんのよ・・・私をその気にさせといて・・・バカミスター」


しかたないので私も、お買い物にでかけることにした。


私の足は中古のリトルカブ・・・色はプコブルー。

自動車免許しかもってないからね、原付しか乗れないの。


私のリトルカブは、バイク屋さんの店頭に端っこに寂しそうに置かれてて、

バイク屋のおじさんが「五万でいいよ」って言うから思わず買っちゃった。


色はプコブルーって、どんな色かって言うと、ほら所さんちの世田谷ベース

カラーによく似てる。

所さんちのカラーはアメリカの軍艦色なんだって。

だからリトルカブの愛称はボディーカラーから取って「プコ太郎」ってつけ

ちゃった。


お天気の日は、プコ太郎で通学して雨の日は電車に傘さして徒歩。


ミスターが昆虫採集にポンコツフィガロに乗ってっちゃったから、私は

プコ太郎でお買い物。

って言ってもバイトのお金、ほとんど使っちゃったから、金欠。

ミスターにおんぶに抱っこ状態。


だからまあウインドショッピングかな。


街へ出て商店街を歩いて、中古書店に入って、アニメイトに入って・・・

でも店の中の空気の悪い事。

アニメは好きだからいいんだけど、それよりなんか目がイッちゃってるオタクが

何人もいて、怖くて慌てて店を出た。


で、コーヒーくらい飲めるお金は持ってたからカフェで休憩。

そのカフェ「ひっそりたたずむコーヒー屋さん」って言って可愛いお店だけど

コーヒーがすごぶる美味しい。

三度ばかり大学の帰り、ミスターとも来たことがある。


帰ろうって思ってプコ太郎にまたがって、ふと閃いた。


「あ、そうだ、念のため・・・」


そう思ってマンションへの帰り私は薬局へ寄って、よく分かんないまま

あるモノを適当に選んだ。

どれがいいですか?なんて薬剤師さんに熱心に聞きづらいし・・・。

お財布に1,000円と500円玉がいくつか残ってたから、とりあえず2,000円

くらいのを・・・。


レジに持って行った時はちょっぴり恥ずかしかったけどね・・・。

コンドーさんを買うのなんて初めてだし・・・。


ミスターとの夜のために必要かなって思って、たぶんミスターはそこまで気を

利かして準備なんかしてないと思うからね。

まあ、たぶん今の時期は大丈夫と思うけど万が一ってこともあるでしょ。


まだ赤ちゃん欲しくないのに欲望が先行してできちゃったらで、きちゃった

赤ちゃんにも悪いしね。

それに私が妊娠でもしたら一番困るのはミスターでしょ。

きっと責任感じちゃうと思うから、彼に負担かけたくないもんね。

私との関係も全部バレちゃうし・・・。


親にだって言わなきゃいけなくなるし・・・そんなこと考えただけで、目の前

真っ暗になっちゃうから手は打っておいたほいがいいの。

だから妊娠しちゃいけないの。


さあ、ミスター心の準備できたかな?

で帰ったら、マンションの駐車場にポンコツフィガロが止まってた。


「帰って来てる・・・虫取れたのかな・・・あ〜想像しただけで気持ち悪く

なってきた」


「お帰り、雨野君」


「ただいま、ミスター」


そう言って私はミスターをハグしに・・・でただいまのチュー。

そのたびにミスターは恥ずかしがる・・・いい歳してるのにキモウブ。

まあ、そうね、私と出会うまで女経験ゼロだったみたいだし・・・。

私みたいな可愛いギャルがそばにいるなんてミスターからしたら晴天の霹靂よね。


「で?ミスター心の準備できた?」


「準備?・・・なにそれ?」


「私がシャワーしてる間に、逃げたでしょ」

「私を捕まえるって言ったよね」


「ああ・・・昆虫追いかけてて、そんなこと忘れてたわ」


「うそ〜まじで?、今からでも遅くないから心の準備して」

「準備できなくても、今夜は逃さないからね・・・」


そう言って私は壁に立てかけてあった虫取り網をミスターの頭にかぶせた。


「昆虫を夢中で追いかけたから、疲れちゃって雨野君を捕まえる気力ゼロ・・・

頼むから今夜はゆっくり寝かせてくれ・・・」


「え〜今夜がチャンスと思ってコンドームまで買って来たんだよ?」


「準備いいね、雨野君・・・でもコンドームは今夜使わなくても腐りゃしないよ」


「ぷ〜・・・ぷ〜・・・ぷ〜・・・私が先に腐っちゃうよ!!」


つづく。


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