第3話:やっぱり被害妄想。

実は私とミスターが住んでるマンションに男の子の猫ちゃんが一人いるの。


名前は「モン・シュシュ」


フランス語で可愛いって意味。


愛称は「モンちゃん」


で、種類はラグドール、気品に満ち溢れてて、まるで王子様みたい。


ミスターは猫派なんだって。

理由は可愛いとかじゃなくて基本猫も犬も好きなんだけど、犬は散歩に

行かなきゃいけないからその点、猫は手がかからないからいいんだってよ。


私とミスターが知り合う前にミスターが保護猫だったモンちゃんを引き取ったの。


で、譲渡会に行ってモンちゃんと知り合ったの。

モンちゃんは多頭飼いされたてたみたいだからか最初はなかなかミスターに

慣れなくてちょっと困ったみたいね。

だけど一緒に生活してくうちに仲良くなれたみたいよ。

ミスターは、のんびりしてるからね、事を急がない人だからそれがよかったのかも。


そのモンちゃんは朝は大概自分のベッドで寝てることが多いね。

今はもう私のも慣れて、仲良くやってる。


今日は大学はお休み・・・ミスターは机に向かって何かに没頭してる・・・

大概は専門書を読んでるんだよね・・・昆虫の・・・。


「ねえ、ミスター休日くらい、どこかへ出かけませんか?」


「え?、ああ僕は休みはゆっくりしたいの」


「ミスター今更だけど、その髪、天パー?」


「そうね、なにもしなくても縮れてるね・・・子供の頃からかな」


「スズメの巣みたいで可愛い」


「可愛いってなに、いい歳の中年捕まえて可愛いって・・・どうせ言うなら

カッコいいって言いなさいよ」


「あ〜欲目に見てもカッコよくはないですね」


「人の髪で遊ぶんじゃないよ」


私はミスターの言葉を無視してベランダから、空を見ながら言った。


「いいお天気ですよミスター、お買い物にでも出かけましょうよ」


「買い物に行きたいんなら雨野君、ひとりで行けば?」

「僕はね、スーパーとかに行くと頭が痛くなるの」


「ほんとに出不精ですよね、ミスター」


「どこかへ行くとさ・・・僕すぐに家に帰りたくなるんだよね」

「で、帰って来ると、やっぱり家が一番いいって思っちゃうんだ・・・」


「ああ、それは分かる気もしますけど・・・」

「でもそうやって動かないでいたらお尻にデッカい根っこが生えますよ」

「屋久島の縄文杉みたいに・・・」


「ほ〜なるほど・・・それはなかなか面白い表現・・・雨野君」


「そうですか?」

「じゃ〜遠くが嫌なら、お散歩は?」


「散歩なんかに出て歩いてる最中に誰かに刺されたらどうすんだよ」


「被害妄想・・・そんなことあるわけないじゃないですか」

「近隣の人たち、みんないい人ばかりでしょ」


「なんでそんなこと言えるんだよ」

「僕はね、この歳までいろんな人を信用して生きてきたけど、裏切られた

人の数のほうが多かったよ・・・」


「それは、ミスターに人望と人を見る目がなかっただけでしょ」


「たしかに・・・人望はないけど見る目はあるよ、雨野君を見つけたからね」


「なに言ってるんですか・・・私が教授に告白したからじゃないですか?」

「絶対、ミスターは見る目もないから・・・」


「私のことより雨野君は人を信用しすぎ・・・疑うことも知らないと騙されるよ」


「人を疑ってばかりいたら心が汚れますよ」


「ほ〜じゃあ、なにか?僕の心が汚れてるとでも?」


「幼稚園児なみにピュアなんですか?」


「いい歳して、そんなやつはいないだろ?」

「用心に越したことはないって言ってるの・・・分かった?雨野君」


「やっぱり被害妄想」


つづく。


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