第30話 佐々木悠真⑤



 当て馬キャラの石橋強が主人公である俺のヒロイン達を奪おうとしている。


 そんな問題を抱えていたある日、転機が訪れた。



 粗暴晶。


 全ルート共通のNTRキャラクター。凶暴な見た目通りの獣のような男だ。喧嘩もめっぽう強く、女と取っ替え引っ替えしまくっているクズ男。


 そんな粗暴が最近目をつけ始めた女子生徒がいるらしい。


 その女子の名前は千秋雫。


 攻略ヒロインではなく、本来名前すらないただのサブキャラクターだ。


 理由はわからないけど、イメチェンをしたらしく最近可愛いと話題になっている。


 どうやらクラス問わず人気だとか。



「え、まさか……上靴のまま行く気か?」


「あったりまえじゃん。時短だよ時短」



 そんな千秋雫と石橋強が昼休み、二人っきりで仲良くどこかへ行こうとするところを見かけた。



 これは使えると思った。



「あの……粗暴くん」


「あ? 誰だお前」



 だから、俺は粗暴に千秋雫が同じクラスメイトである石橋強と仲良さそうに手を繋いで、学校を抜け出していたと告げ口した。



「手を繋いで……あまりにも楽しそうだったから……粗暴くんには千秋さんから手を引いてもらいたくて」 



 そう言いながら当時撮った写真を見せる。


 写真の二人は手を繋いでいるというか、千秋雫が石橋強の手を引っ張っているのだが、粗暴にはそんなこと関係なかった。


 

「あ? 手を引くわけねーだろ。もしろ奪ってやりたくなったね。それにしても俺の女に唾つけるとは……いい度胸だなぁ」



 別にお前の女ではないけどなと心の中で嘲笑いながら走り出した粗暴を見送った。


 

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