第28話 転生仲間
「なるほどね。ゲームのキャラクターに転生。正直、話がぶっ飛び過ぎてて付いていけないんだけど……」
俺の説明を聞いた千秋は頭を抱えていた。
「まぁ、アニメやラノベにはよくある話だし。そう考えれば納得がいくだろ?」
「は? そんなので納得出来るわけないだろ。お前なんかと一緒にすんなキモオタ」
ひどい……
「まぁ、実際に起きてしまってるんだから受け入れるしかないか……」
頭をボリボリかきながらぼやく千秋。
「一応聞いておくけど、前世では男……だったんだよな?」
「ああ、そだな。転生で女になったけど」
おお、唯一の同郷でしかも男同士か……!! なんだか、一気に親近感が湧いてきたぞ。
「女の子に転生して大変じゃないか? その……色々と」
「は? 色々ってなんだよ」
「えっ、いや……お風呂とか……その裸になるし……大変そうだなって」
千秋は口籠もる俺をみながら不思議そうに首を傾げる。
「いや別に? 女の裸なんて前世では死ぬほど見てるし、触ってるし」
「……っすか」
さようなら、親近感。ナメた口聞いてすいませんでした。
「……さてはお前童ー」
「そんなことよりもさ!! どうやって転生したんだ!? 居眠り運転のトラックに轢かれたりとか!?」
あまりにも露骨な話題逸らしに俺の心を見抜いたのか、千秋は鼻で笑うと「そうだな」と話に乗ってくれた。
「ヒモになってた女とトラブって包丁でぶっ刺された。死ぬほど痛かった」
やべーやつだった。
「何人目のヒモだったけ……10? いや11人目?」
「なるほど……人間の屑。死んで当然だったというわけか。恥を知れ、恥を」
「お前……そういう石橋くんはさぞご立派な死に方だったんだろうな?」
そう言いながらジロリと俺を見る千秋。
う、そんなこと言われるとそんなたいそうな理由ではないんだけどな。
「何だよ。早く言えよ。ま、どうせしょうもない理由なんだろうけどー」
「先天性の心臓疾患で……」
「え」
「入院してて。移植手術しか助かる方法がなくて、心臓のドナーが見つかるまで病院で延命処置を受けてたんだけど……」
「ちょっと待ってくれ……なんか重い話が始まったんだけど?」
「それで、案の定間に合わなくて……長い間碌に人と話すことなく最後は大量の機械に繋がれたまま孤独に……」
「お、おう……そ、そっか」
「まぁ、あのままじゃ心臓のドナーも見つからなっただろうし、一人ずっと寝たきりで動けないままならいっそのこと死んでしまっていた方がー」
「ごめんて!! 俺が悪かったから! はい!! この話やめやめ!」
なぜか千秋が焦った様子で大声を出した瞬間、スマホから着信が。
「月島麗華? お、何だよ陰キャくん〜? カノジョですか?」
「いや、なぜか彼女ずらして来る謎の女。ワンコールででないと怒鳴り散らしてくる」
「やべー女じゃねぇか。気をつけた方がいいぞ? そういう女は油断してると包丁で刺して来るから」
さすが経験者、言葉の重みが違う。
「ていうかさ、俺とお前ってゲームのキャラクターに転生してるんだよな? お前ってどんな役のキャラなの?」
「……主人公で当て馬キャラです」
「ふーん。噛ませってキャラってわけね。見た目が童貞陰キャのお前とは真逆じゃん」
うるさいな。黙れよ。
「で、俺は? 主人公に攻略されちゃうヒロインキャラなのか?」
「いや、名前すら出てないモブキャラクターだよ」
「まじ? じゃあ俺、安全圏じゃん〜」
安全圏か……確かにストーリに碌に関わらないから、そう言っても過言ではないかもしれない。
ていうか、石橋ってこいつにこそ相応しい器なんじゃないの? 俺とこいつ。キャラ配分が逆な気がするんだけど。
「ま、俺はこのまま馬鹿な男子どもにちやほやされながら過ごしていくとしますか……そのために美容院行ったりしたんだし」
なるほど、外見を変えたのも、猫かぶってるのもそのためか。
「んー!! なんか色々と考えてたら腹減ってきた。よし、学校抜け出してラーメンでも食いに行こう」
千秋がスマホをぽちぽちしながら立ち上がった。
「止めないけど、行くなら先生にバレないようにしなよ」
そろそろ俺も生徒会室に行くとしよう。麗華には電話に出なかったことどう説明しようか。
「いやいやいや、あんたも来るんだよ」
「は? なんで?」
思わず聞き返した俺に対してやれやれとため息を吐く。
「財布が居ないと食べれないでしょ。俺に無銭飲食をしろっていうのかよ?」
なるほど、さすが前世はヒモ男だったことがある。
「ほらほら、早く行くぞークラスの男子に倒れたお前を保健室で介抱してるから昼一の授業には出れないって先生に伝えておいて♪ってメッセージでお願いしといたから」
そう言いながらしたり顔する千秋雫。もうとっくにお前と俺は共犯関係だと言いたげな表情だ。
「……今回だけだからな」
色々と言いたいことがあったが、同郷のよしみで一回くらいはいいかと思い、千秋の後を追った。
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