第25話 従者からのお願い
土曜日の朝。
俺はスマホのアラームで目を覚まし、朝食を作っていた。
「……よし」
ご飯も炊けて、だし巻きも綺麗に出来上がり、味噌汁と焼き鮭も完成。納豆も準備よし。片手間でおひたしも出来た。
さて、朝ごはんも出来たことだし、そろそろ……
部屋へ向かい、すやすやと眠っているジャージ姿の雛乃を起こす。
「おい、起きろ。朝ごはんできたぞ」
「……ん〜」
「さっさと着替えて顔洗ってこい」
「ん〜」
雛乃が朝の準備をしている間、洗濯カゴに詰まった自分と雛乃の服と下着をベランダに干す。
最初は見るだけでもドキマギしていた雛乃の下着も今となっては何も感じない。
雛乃がリビングに来たのとほぼ同時に洗濯物も終了。
「ほら、ご飯大盛り」
「ん」
いつも通り、眠そうに大きなあくびしながらご飯を食べ始める雛乃。
自身の茶碗にご飯をよそい、雛乃と対面に座り、手を合わせてご飯を食べ始める。
「……お、今日のだし巻き。美味しいですねご主人〜」
「ああ、今日はなかなかの自信作だ」
「ですね。見た目も綺麗ですし。うーん。これはなかなか点数が高いですよ〜95点あげちゃいます」
「ほー中々の高得点じゃねえか。つーか過去一番の点数出たな」
「ですです。この前は点数が低かったんで、無事リベンジ成功ですね」
あははと二人で笑いながら食べる朝食。
……
…………
…………………
「いや待て、おかしくないか?」
「え? 何がですか?」
「朝、俺がご飯作って、俺がモーニングコールして、俺が洗濯干して……いや洗濯は役割だからいいとして、それ以外は本来お前が俺にやるべきことなんじゃないのか?」
「……ご主人。これはあれですよ。ご主人の生活スキルを向上させる為にあえて……わかりました。これからはちゃんと働きますから、今すぐスマホを置いて下さい。何をする気ですか? もしかして源一郎様に電話とかしないですよね?」
物分かりが良くて助かる。
雛乃の答えに満足していると真由からメッセージが。
「ちょっとご主人!? なんで再びスマホを手に取ってるんですか!?」
源一郎に連絡されると勘違いしたのか、本気で慌てた様子で俺のスマホを取り上げようと手を伸ばしてきた。
「おい、落ち着け。小日向からのメッセージを見ようとしただけだ」
「……小日向さん?」
ジトっとした目で雛乃がこちらを見つめてくる。
「なんだよ」
「ここ最近のご主人、小日向さんとメッセージばっかりしてませんか?」
「ああ、そうかもな。連絡先交換してからは毎日してる気がする……」
「……ふーん。毎日。毎日ねー」
なんでそこにこだわるんだ?
「……ご主人って最近あれですよね。色気づいてますよね? あれですか? ハーレム狙ってるんですか?」
「……は?」
ジロリと不機嫌な視線と共にわけのわからないことを言い出した。
「お昼休みは生徒会室で月島さんと小日向さんとよろしくやって、家では私! いつも美少女に囲まれてちやほやされて! こんなのハーレムじゃないですか!!」
「は?」
待て待て待て。麗華とお前にちやほやされている? 俺が?
ちやほやどころか振り回されてるんだが……
「……バカなこと言ってないでさっさと食べろ」
さらっと受け流し流すと雛乃は不満げにブツクサ言いながら箸を進めた。
「……はぁ」
そんで、いきなり隣でため息をついた。いや、俺がため息つきたいんだけど。
「………………」
なんだなんだ。なんでそんなにそわそわしている? なんでチラチラこっちを見てくる?
「……はぁっ」
今度のため息はさっきより大きかった。
「もう!! ここはどうしたのって聞いてくるところでしょ!! てか聞いて気ださいよ!」
「どうしたの」
「……まぁ、いいでしょう」
明らかに不満気な顔をしながらこちらを見る雛乃。
「実は私、休み明け3年生の先輩に呼び出されたんですよね……いやー断ろうとしたんですけど、しつこくてー」
何故か得意気な顔をする雛乃。
「そうか。そんなことより、お前、今日は午後から用事で出掛けるんだったよな」
「待って下さい!? そんなこと!? そんなことって言いました!? ご主人私に対して少しは興味持って下さいよ!」
「あはは。…………で、告白がどうしたって?」
笑って誤魔化そうとしたら雛乃が剣呑な視線をこちらに向けてきたので、話を進めることにした。
「ご主人には告白現場に居て欲しいんですよ」
「……なんで」
「いやね? 告白してくる先輩、凶暴さで有名で……もし、告白を断ったら怒って何かされるかも……」
「告白される時間と場所は?」
こいつ……そういうことは先に言ってくれ。どこのどいつだ? 確かNTRキャラにそんなキャラが居たはず。
「お、おう……ご主人がいきなり乗り気になってびっくりなんですが……」
とここまで言った瞬間、何かに気づいたようにハッと目を見張った。
「あれ? あれあれあれ?」
雛乃はにやにやと笑いながらこちらを見つめてくる。
「もしかしてぇ〜私のこと心配なんですか? もーご主人……私のこと好きすぎでしょ〜」
「そうだよ。結構真剣にで心配してるんだから、茶化さないでさっさと教えろ」
「……あ、ハイ。ソウデスカ」
なんでお前が照れてんだよ。
「ほんと……そういうところですよ」
「何か言ったか?」
「……なんでもありません!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます