第4話 君の声
放課後。
なんだかんだ気になった俺は麗華の様子を確認するべく生徒会室付近を彷徨っていた。
一応、主人公である佐々木悠真に手伝わせるようにフラグを建てたのだが……果たして結果は。
「佐々木くんありがとう。手伝ってくれて」
「お、同じ生徒会メンバーなんだから! これくらいは当然だよ!」
目の前には主人公の悠真とヒロインの麗華が二人並んで歩いている姿が。
よかった。俺の思惑通り、麗華は悠真に手伝いを頼んだみたいだ。バレないように少し離れながら二人の様子を見守る。
「なんだか嬉しいよ。月島さんが僕なんかを頼ってくれて」
「大袈裟なんじゃない?」
「だって、みんな僕となんかと違って特進クラスですごい人達ばかりだから……」
「……私、佐々木くんもすごい人だと思ってるけど」
「……え?」
「一般クラスで生徒会に入るのは並大抵なことじゃない。それを成し遂げた佐々木くんの能力と努力は尊敬してるつもり」
「月島さん……ありがとう。月島さんにそう言ってもらえると自信がつくよ!」
「もう、それは大袈裟じゃない?」
なかなかいい感じじゃないか?
……これ以上は野暮だな。そう思い、この場を後にしー
「あ、麗華ちゃんじゃん〜」
ここにきてまさかのNTRキャラであるクズ島が現れてしまった。
クズ島貴様!! どれだけ邪魔をすれば気が済むんだ!!
「え? なに? 今一人? よかったらさ、今から遊びに行かない? マジ、絶対楽しませるからさ〜」
自分にとって都合が悪いから言及しないのか、最初から悠真なんて眼中にないのか。悠真の存在を無視して話を続けるクズ島。
「あ、あの……!! すいません! 今、生徒会の実務中で……!!」
「は? なにお前。邪魔」
「ぐっ!?」
クズ島は悠太に目もくれず、邪魔だと言わんばかりに突き飛ばした。
「つーか、生徒会の実務とか任せておけばいいじゃん。ほら、俺と一緒に行こうぜ」
「佐々木くん!」
麗華はクズ島の言葉を無視して突き飛ばされた悠真のもとへ駆け寄った。
「は? おい麗華。なんで俺を無視してこんなカスのことを心配すんだよ」
麗華が心配そうに悠真に駆け寄った瞬間、クズ島の表情が変わる。麗華の自身と悠真の扱いの差を見せつけられてプライドが傷ついたんだろう。
ここで初めて、クズ島の視界に悠真が映る。
「……佐々木くんになにをしようとしてるんですか?」
クズ島の変化に気がついた麗華は咄嗟に悠真を庇うように前に出た。
「は? なに? まさか、そんなやつのこと庇ってんの? ふーん。ちょっと痛い目をみなくちゃ分からないか」
「ッ!!」
クズ島に睨まれた麗華は少し震えていた。いくら麗華でも年上の男子に凄まれたら怖い。
そんな麗華の姿を見ても、周りにいる生徒達は誰も助けようとしない。
誰も助けないのはクズ島が理事長の息子だからだ。
ここで下手に手を出せば、今度は自分が……もしかしたら報復として退学に追い込まれるかもしれない。
そんな考えがよぎってしまい手助けが出来なくなる。
だから、周りの生徒も……先生ですら、麗華と悠真を見て見ぬ振りをする。
麗華の声なき声は届かない。
ただし、俺を除いて。
一歩、足を踏み出す。
「よう。先輩。なんだか楽しそうじゃねぇか。俺の友達に何か用か?」
俺は麗華を背に庇うようにして前に出て、クズ島に怒気を含んだ声を浴びせた。
「……!!」
俺を見た瞬間、どこかほっとした表情になる麗華。
「お、お前は……」
さっきまでの威勢はどこえやら、俺が来た途端、顔が完全に青ざめるクズ島。その表情は怯えていた。
おそらく、この前に俺と自身の力の差を思い知っているからだろう。
「ッ!! ……ち」
俺を見て敵わないと思ったのか、諦めたようにこの場を立ち去ろうとする。
しかし
「……おい。待て」
「……あ?」
引き止めるとクズ島は立ち止まり、怪訝な顔で振り向く。
まだなにも終わってない。というかこれからが本題だ。
「佐々木に謝れよ。一方的に突き飛ばしといて謝罪もなしか?」
俺が問いただした瞬間、明らかに面倒くさそうな表情をするクズ島。
それがさらに俺をイラつかせた。
「ぐっ!?」
クズ島に近寄り、逃げないように胸ぐらを掴んだ。
「謝らないのなら、お前が佐々木にやったことをやり返す。倍にしてな」
「うっ……わ、悪かった! ……こ、これでいいだろっ」
悠真の方を見ながら、クズ島は形だけの謝罪をした。全然心がこもってないが、これ以上は無理だろう。
「さっさと失せろ」
掴んでいた手を離し、屑島を解放する。
ケホケホと少し苦しそうに咳をしながらもクズ島は俺を睨みつけ、立ち去っていった。
「……大丈夫か」
「え、あ、う、うん……」
佐々木に手を差し伸べるとオロオロとしながら俺の手を掴み、立ち上がった。
「邪魔したなー」
そう、二人に声をかけながら立ち去ろうとした瞬間、麗華がぺたんと座り込んだ。そしてじっと潤んだ瞳でこちらを見つめる。
「おい、大丈夫か」
思わぬ緊急事態に急いで麗華の元に歩み寄り、膝をついた。
「腰が抜けて立てない。おぶって」
……は?
「いや、あのな……こういうのは佐々木に頼めよ」
「なに言ってるの? 佐々木くんに迷惑がかかるでしょ? いっしーはちゃんと人のことを考えた方がいいよ」
お前がいうな。
「なに? 嫌なの?……はぁ、しょうがないな。姫様抱っこで我慢してあげる。恥ずかしいけど、いっしーがどうしてもって言うのなら……いいよ」
「おい、なんで譲歩しましたみたいな感じになってるんだ?」
はぁ……もういいや。これ以上話しても無駄だ。とりあえずおぶる為に麗華の体に触れる。
「あ、ちょっ!? ひゃん!? ど、どどこ触ってるの!? え、えっち!」
「おい、佐々木行くぞ」
「え、あ、はい」
うだうだ吠える麗華を無視して俺たちはその場を後にした
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