第10話 オカルト好きな美人女子大生に会いに行く。

 樹里から夢の話を聞き、奏が高校に転校してきた日の放課後。拓朗は教えてもらった住所を頼りにとある大学へと向かっていた。


 たどり着くと校門前にその女性は居た。彼女も拓朗に気が付くと手を振って来る。


「やっほー、救世主くん」


「あはは……そんな大層なものじゃないですよ」


 腰のあたりまでまっすぐ伸びる、青く染めた髪。へそ出しのトップスに、綺麗な生脚を大胆にさらけ出すデニムのショートパンツをはいている彼女は、いかにも大学生というイメージだった。


(そう言えばバイト以外ではあったことないもんな……)


 拓朗の知る速水はやみ 麻里まりは、もちろん仕事だからだろう上下無地の服を着ていた。そして髪も後ろで1本で縛っていたのだ。


 今回も、そして1周目でも彼女はバイトを始めたばかりの拓朗の教育係だった。


「ほんとに救世主なんだって。拓朗くんが居なかったらわたし、これからもずっとあのバイトで苦しみ続けてたと思うからさ」


 先ほどまでの気さくな雰囲気からは一転し、真剣に感謝の気持ちを伝える麻里。


(やっぱり行動してよかった……速水さんを助けられたなら)


「それで、今日はどうしたの? もしかしてお姉さんに会いに来てくれた?」


「まぁ、そんなとこです」


「ふふっ、嬉しいこと言ってくれるね」


 実は麻里はオカルト研究会なるサークルに入っており、樹里の夢のことやタイムリープのことについて聞くという目的もあるのだが、純粋に会いたかったという気持ちの方が大きかった。


 この2週目ではほんの数回しか会っていないが、1周目を経験している拓朗にとっては1年近くお世話になった存在なのだ。


「速水さんはこの後、時間は大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫だよ。あの最悪なバイトももうないし、サークルも休みだからさ」


「サークル……なにやってるか聞いてもいいですか?」


 自然な流れでオカルト研究会の話へと繋げる拓朗。


(2周目では速水さんのサークルの話を直接聞いてないから、どうやって話を繋げようかと思ったけど……案外上手く行きそうだな)


 そうしてしばらく彼女の話を聞く拓朗。


「そうだ、オカルト好きな速水さんだったら興味を持ってくれるかもしれない話しがあるんですけど……」


「どんな話?」


 拓朗はまず、食堂で聞いた樹里の話を一通り伝えた。


「夢で未来の出来事を予知している……とか、そういうことってあると思います?」


「へぇ……面白いね」


 彼女の表情が変わった。


「ちょっと、場所変えて話そっか。なにか食べたいものある? 救世主の君には、お姉さんがいっぱい奢ってあげよう~」


 それから拓朗は麻里とゆっくりと話をするため、彼女の車でカフェへと向かうことになった。大学の近くにおすすめの場所があるようだ。


「ところでさ」


 駐車場にたどり着いたとき、麻里は車の鍵を開け、拓朗の方を振り返った。


「拓朗くん……キミ、今何周目なの?」


「えっ……!」

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