第11話 車の中での麻里との会話。
「あははっ、ごめんごめん! 冗談だって」
麻里が拓朗の肩をバシバシと叩いて来る。
現在拓朗は、麻里の車の助手席座っていた。彼女のオススメだと言うカフェに向かうためだ。
「ほら、タイムリープ系の作品でよくあるじゃん? 予想してなかったキャラがいきなり『今何周目?』とか聞いて来るやつ。あれ、めっちゃ興奮しない?」
「……めっちゃわかります」
「そういうの、リアルでも1回やってみたかったんだよね」
つまり、麻里が駐車場で言った『拓朗くん……キミ、今何周目なの?』はすべて冗談だったわけだ。
(マジか~めっちゃ本気で反応しちゃったじゃん! 麻里さんが本当に俺のタイムリープを把握してるのかと)
「てか拓朗くん、めっちゃ驚いてなかった? もしかして、本当にタイムリープしてたりして……」
「うっ……」
(まずい……いや)
と、拓朗はふと脳内で何かがよぎる。
(俺がタイムリープしていることを隠す理由ってなんだ? そんなこと言っても頭がおかしいやつだと思われるから? けど、いま隣に座っている速水さんはその一般的に頭がおかしいと思われるような話が大好きな人だ。別に、隠す必要ないんじゃないか?)
確かにタイムリープのことを誰かが知ったことで、なにか世界の摂理に不都合なことが起こるというような恐れはあるかもしれない。けれど、何も起こらないかもしれない。結局のところどうなるかはわからないのだ。
(俺は後悔することのないようにこの2週目をやり切ると決めたんだ。だったらもう、迷う必要もない)
「バレちゃったなら仕方ありませんね。速水さん、俺この世界、2回目なんですよ」
「えっ、ちょっ……なになにっ!? もしかしてさっきの仕返し~?」
麻里は拓朗が先ほどの冗談の仕返しで言ってきたと思っているのか、そんなことを言ってくる。
けれど拓朗は確信していた。きっと麻里は信じてくれると。
「ほら、タイムリープ系の作品でよくあるじゃないですか。どうせ言っても周りに信じてもらえないからって、主人公が自分に起こってる現象を隠すやつ。あれ、めっちゃモヤモヤしません?」
「……めっちゃわかる」
「俺、もし自分がアニメとかゲームの主人公みたいに非現実的ななにかに巻き込まれたら、絶対隠さないようにしようって思ってたんですよ」
「……なるほど、それは説得力あるね。やっぱ予定変更。カフェだと人から聞かれるかもしれないから、わたしの部屋行こっか。住んでるアパート、結構近いんだ。近くのスーパーで美味しいもん買ってこ」
そうして拓朗は、麻里が1人暮らしをしているというアパートの部屋に向かうことになった。
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