無常

「ん…ここどこ…?」


あぁそうか…わけのわからない人に拉致されたんだっけ。


起き上がろうと力を入れると腰に鈍痛が走った。


「はぁ…」


起き上がるのは諦め、無駄に広いベッドから高い天井を見上げる。


そして、今までのことを思い返す。


目が覚めたらあの少年…悪魔が居て。


信じがたい現実を突きつけられたと思ったら屈辱的なことを沢山…


まぁどうせなんの為に生きているのかすらも分からなかった私にはお似合いではないか。


なんて考えては自分で自分のことを鼻で笑う。


衣食住が保証されていて、その辺のお偉いさんの相手をしろってことでしょ?


上等だ。


やってやろうじゃないか。


生きることも死ぬことも何もかもが面倒だったんだし、最後に楽しんで終わってやろう。


どうせ使えなくなったら口封じに殺されるんだろうし、成るように成るだろう。


コンコン


私の意志が固まるのを待っていたかのように寝室のドアをノックされる。


「はい」


「目が覚めたか」


「誰?」


「お前の教育係だ」


表情一つ変えずにこちらを見据える男。


教育係って一人じゃないんだ。


「そう、よろしく」


「随分と落ち着いてるんだな」


「じゃあここで泣き喚けば解放してくれるの?」


「いや?」


微かに笑った男は許可もなく私が寝ているベッドに腰かける。


「ねぇ、今は勘弁してくれない?あの金髪のチビのせいで身体痛いから」


「翔のことか?」


「知らない。自己紹介されたけど名前覚えてない」


「高橋翔な。俺は山内悠斗(やまうちゆうと)だからよろしく」


「そう」


「覚える気ないだろ」


「名前覚えるの苦手なんだもん。それに名前覚えるのなんてそんな重要?」


「客の名前間違えたり、覚えてないってのは避けたいからな。覚える努力をしろ」


「はいはい」


なにやら話しながらベッドの下の引き出しをガサガサしている。


「これでいいか…」


「なにしてるの?」


わざわざ痛い身体を起き上がらせてまで確認する程興味もなく質問だけを投げかける。


「…」


はい無視ね。


はいはい。


この男は不愛想で何を考えているかわからないが、あの金髪のような狂気じみた雰囲気は感じない。


そもそもあの金髪は二重人格にも程がある。


先程は困惑していてあまり頭が働いていなかったが一度寝てすっきりしたのか、諦めがついたのか、無駄に冷静だ。


「あー…えっとなんだっけ…あの金髪くんとあんたって友達なの?」


「翔な。いい加減覚えろ。幼馴染だ」


「へー、私とそう歳も変わらないだろうにこんな人攫いみたいなことしていいわけ?人生終わるよ?」


「余計なお世話だな。腕出せ」


「は?腕?」


不思議に思いながらも布団に入れていた腕を出す。


カチャ


「本当、落ち着いてるんだな」


これは落ち着いているのではない。


驚いているのだ。


「えっ…は?なにこれ」


私の腕に付いているのは紛れもない手錠。


呆気に取られている間にもう片方の腕も手錠に繋がれ、ベッドの頭部分にあった輪になった突起に手錠を固定される。


絶対この為だけに設置されたであろう突起。


「暴れると面倒だから」


「いや暴れないから外してこれ…しかも私体痛いから後にしてって…」


「それを了承した覚えはない」


「わかった!好きにしていいから外して」


「断る」


「…」


私に掛かっていた布団は剥がれ、知らぬ間に着せられていたワンピースの部屋着は胸の上まで上げられて。


翔にされている最中に気を失った私は下着なんて付けさせてもらっておらず、あっという間に身体を晒してしまったのだった。


「白…細…」


「うっさい」


「なぁ、金髪のチビの名前覚えた?」


「翔でしょ。そんな何回も言われたら覚えるわよ」


「じゃあ俺は?」


「…ゆう……ま?」


「はずれ。足も追加な」


「え…は?!ちょ、やめてよ!」


左足にも金属の輪を掛けられ、おそらくベッド下にあるであろう何かに繋がれた。


私が抵抗しようが一切表情を変えずにねじ伏せてく。


馬鹿力…


右足だけはなんとか死守しようと、男を蹴る。


「生意気。さっきの落ち着きはどうした?」


蹴った、はずだった。


私が蹴ってくるのがわかっていたかのように足を容易に受け止めやがった。


「最悪…」


右足も左足同様固定され、男に秘部をさらけ出すような体制になる。


「じゃ、お香焚いとくからしばらくそのまま待ってろ」


「は…?」


しばらく?このまま?


しかもお香って…


手際よく男はお香を焚いてすぐに部屋を出て行ってしまった。


あの甘い匂いが充満してくる。


翔にされたことが一気に蘇ってくる。


髪を掴まれて、舐めさせられて…喉奥でイかされて…


気持ちいいって言うまで焦らされて…


言ったら、奥まで…入れられて…


そのあとも何回もイかされて…


最後は中に…


「はぁ…っ…」


なんの覆いもなく外気に晒されているそこから、液が垂れる感覚がした。











「はぁ…はぁ…」


どれくらいの時間が経っただろうか。


1時間?2時間?もしかしたら30分程度かもしれない。


身体の大半が外気晒されているというのに私の身体は熱を持ち、触られてもいないのに胸の頂はピンと主張をしている。


大きく開かれた足の中心は濡れそぼっていた。


どうにか少しでも快楽を得ようと身を捩るが、足を閉じることも肘を胸の頂に擦り付けようとしてもあと少しが届かない。


無様にガチャガチャと金具を鳴らすだけであった。


ガチャ、と金具の音とは別に扉が開く音がする。


その方向を見ると私をこんなにした犯人が。


「悪い。本を読んでいたら忘れてた」


本を片手に、全く悪いなんて思って無さそうな顔に殺意が沸く。


「ふざ…けんな…はぁ…っ…」


「辛いか」


「当たり前っ、でしょ…」


「悪かったな」


ベッドの下からまた何かを取り出し私の横に腰かける。


小さい洗濯ばさみのようなものだった。


そこには線が繋がっており、その先にはリモコンのようなものがあった。


血の気が引く。


アダルトグッズ。


いわゆる大人の玩具だ。


快楽を求めていた身体だが、これから身に起きることを想像するとそれどころではなかった。


「それ…いやだ…やめて」


「お詫びなんだがな」


「いらないから…これ外してっ…」


腹の奥が疼くのとは裏腹に恐怖で身体が震えた。


翔の時であんなになってしまったのに今この状態でそんなものを使われてしまったら壊れてしまう。


外してと懇願するようにガシャガシャと金具を鳴らす。


無言で男の手が近づいてくる。


「ひっ…いやっ…!」


目を固く瞑りこれから襲い掛かってくるであろう快楽に身を固めた。


「俺の名前は?」


「へ…?」


「名前」


「ゆうと…」


「正解」


よかった…合ってた。


これで解放され…


「あ”ぁっ!!?」


いきなり左胸の頂に快楽が走った。


あまりにも不意で軽く達してしまった。


「な…んで…名前…合ってたのに…」


「ご褒美」


「そんな…」


こんな嬉しくないご褒美があるだろうか。


悠斗は淡々と右の頂にもそれをつけようとしてくる。


「いやっ…やだ…!いやぁ!!」


問答無用に付けられた。


それだけでは終わらずリモコンを操作し、振動が来る。


「あぁっ!いや!やだぁっ!」


振動に身を捩れば線を引っ張り頂への刺激になる。


刺激に反応し身が跳ねればそれもまた快楽として襲ってくる。


もはや先程までの快楽を求める気持ちは一切無くなり、どうにかこの快楽から逃げたいという気持ちだけが頭の中にあった。


悠斗がまたベッドの下を漁り何かを取り出していたようだが今の私には気に掛ける余裕はない。


胸に与えられている振動に必死に耐えていると、体の中心のもう一つ主張している蕾がなにか小さなスポイトのようなものに吸われる感覚が走った。


「あ”ぁっ!!!」


目を見開き仰け反る身体。


息も絶え絶えの清花と澄ました顔で淡々と快楽を与える悠斗。


「翔と違って俺は気失っても辞めないからな」


「いやっ!もうむりっ!ほん、としぬっ!」


「こんくらいじゃ死なない」


カチカチと股の方から音がする。


直後振動が来る。


ただでさえ敏感な蕾はお香のせいでさらに敏感になっているのに容赦なく快楽は襲ってくる。


「あ”あ”あ”っ!!!」


バチン


と昔のアナログテレビのように意識が途切れる。


このまま知らぬ間に事が終わっていることを願うが…


「…っんああ…!」


そんな願いも虚しくまた現実へと引き戻される。


「気失っても辞めないって言っただろ」


絶頂を迎えては気を失い、快楽で起こされ、また絶頂を迎えて気を失う。


これを幾度となく悠斗に繰り返し行われ、時間の経過すらもまったく感じられずにいた。


気を失っているのは何分なのかそれとも何秒なのか、何度絶頂したのか。


胸の頂にはそれぞれクリップのようなものを挟まれブルブルと震えている。


身体の中心の蕾はスポイトのようなもので吸われており、こちらも震えている。


肝心の中はというと、いつの間にかバイブを突っ込まれている。


ウィンウィンと音を鳴らし、機械的な快楽が私を襲う。


「も、いやぁ!…あ”ぁっ…」


また絶頂を迎える。


もうなにも考えられなくなっている私はそのまま薄れゆく意識に抗わずに深い深い闇に堕ちた。

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