諦め

「てことで早速やろっか」


手を引かれ、私は黙って寝室について行く。


「抵抗しないんだね」


「しても無駄なんでしょ?」


「うん」


なら聞くなよ、と心の中で呟きながらベッドに腰掛ける。


「なんでベッド座ってんの?」


「なんでって…ヤるんじゃないの?」


「ヤるって突っ込んで出して終わりだとでも思ってんの?」


「まぁ大雑把に言ったらそんな感じじゃない?」


別に処女じゃあるまいし…


この少年は何を言っているんだ?


まさか恥ずかしがるとか求めてる訳じゃないよな…


でも私と同い年かもしかしたら下かくらいの年齢だろうし女の子にまだ夢持ってるとか?


アホらし…


「んー…だめだなぁ」


「なに、がっ?!」


一瞬何が起きたのか分からなかったがすぐ目の前に床があることで状況を察した。


私の長い黒髪をこいつは引っ張り床に投げつけたのだ。


「諦めがいいのはこっちも楽でいいんだけどさ?お前は従う側で、こっちがご主人様。わかる?」


「い…っ…」


「ご主人様より先にベッドに座るな」


さっきの「なんでベッド座ってんの?」ってそうゆう意味か…


さっきの人懐っこい表情とは真逆の冷酷な表情を浮かべる。


こいつ…二重人格?


髪を引っ張られる痛みで顔が歪む。


少年…いや、男が私の髪を引っ張りながらベッドに腰掛ける。


「ご奉仕しなきゃね?」


にこっと見下ろしながら微笑む。


意味がわからない訳じゃない。


目の前には男の物がある。


大人しく従おうとジーンズのベルトに手をかける。


が、


「い"っ…!」


「何勝手に触ってんの?」


「は…?」


奉仕ってこうゆうことじゃないのか?


「普通ご主人様の許可を得てからでしょ」


「きょ…か…?」


「当たり前でしょ?許可無しにこんなところ触っていいわけ無いよね」


「…」


やれって言ったのそっちだろ…


「初めてだから優しく教えてあげるね?ご主人様、ご奉仕させてくださいって言うんだよ」


「っ…」


「ほらどうしたの、言ってごらん」


私の髪を引っ張るのを辞めた手で頭を撫でる。


にこり、と親が子供に教えるように。


こんな屈辱的なことがあるだろうか。


ただ抱かれるのに我慢すればいいと思っていた。


「あ、言っとくけど」


口を開かない私の代わりに男が思い出したように口を開く。


「我慢してればいいとかないからね。お前は心の底から男が好きになって、心の底から気持ちよくなって、従順にさせるから。演技とか通じないから」


まるで私の心の声がきこえていたのではないかと思う程の的確な言葉を告げてくる。


「…」


「分かったら、ね?言って」


「…………ご奉仕させてください…ご主人様…」


「うん、いい子」


ポンポンと私の頭を撫でると、どうぞと言わんばかりに脱がせやすい体制になる。


再度ベルトに手をかけ外していく。


ボタンを外し、チャックを下ろし、紺色のシンプルな布地が露になる。


「ストップ」


そう言われ手を止めると、男はベルトを引き抜く。


「後ろ向いて腕出して」


「いや…だ」


「拒否権無いって分かってるんでしょ?それとも殴られたいの?」


「…」


諦め後ろを向き腕を差し出す。


慣れた手つきでベルトで私の両腕を拘束する。


痛くは無い…が外れる気もしない。


「はい、じゃあどうぞ」


男の方に向きなおすと軽く勃ったものが目の前にあった。


手を使わせないために拘束したのね…と呆れながらも口に含む。


早く終わらせようと刺激をする。


「もっと奥まで咥えて」


言われた通り深めに咥える。


舌を這わせ、筋の部分も刺激する。


「まぁ、一般人にしては上手い方かな」


「んぐっ!!」


なんて、嬉しくない評価を貰ったのもつかの間、男の手が頭に触れたと思ったら思いっきり奥まで入れてきた。


そのまま肉棒を喉の奥をゴリゴリと押し込んでくる。


「ほら、ここまで入れるんだよ」


「うっ…おえっ」


吐気をもようしても、肉棒で抑え込まれる。


生理的な涙が流れ、体はガクガクと逃げようとする。


最奥で動きが止まる。


「はいこのまま我慢」


「うっ…んぐ…」


「苦しい?」


「ん"ー!」


当然喋れない私は睨み上げ、唸って苦しいと意思表示をする。


「そっかそっかぁ…でも喉の奥、気持ちよくない?」


私の頭を押えている手とは逆の手で私の頭を撫でる。


気持ちいはずあるわけが無い。


男は私の喉の奥をゆっくりと擦る。


「ん"っ……っふ…」


「あれー?腰動いてるよ?」


なん…で…おかしい…絶対おかしい。


喉から背筋を伝って腰の方までゾクゾクとした何かが走る。


それを快楽とは認めたくないが…喉の奥を擦られるのをもっともっとと思ってしまっている。


「あーいいねそうゆう困惑した表情。ここ、気持ちいでしょ?」


「んっ…う……んん…」


「清花ちゃん才能あるよ。もうイけそうだね」


苦しさはもう無く…いや、苦しいのさえ快楽となりつつある。


ただ頭がぼーっとして腰が揺れてしまう。


「じゃあ出してあげる」


「んぅ!んー!」


嫌だと訴えるが喉の奥に熱いのが出される感覚とそのまま胃に流し込まれるような感覚に…私は絶頂を迎えた。


「清花ちゃんすごいね、初めてで喉でイけるって育てがいあるなぁー」


「げほげほっ…イっ…てな、い…げほっ…」


なんで…なんでなんでなんでなんで!!!!


明らかに絶頂を迎えた私の体は熱く火照っている…だがこの男の思い通りにはなりたくはない。


「嘘は良くないなぁ…?」


「あ"っ…!」


今度は2本の指を喉奥まで突っ込まれる。


喜ぶように私の体はビクビクと反応する。


おかしい!!絶対おかしい!!!


呆気なく指は抜かれる。


私の唾液が付いたその指を舐めながら男は続ける。


「清花ちゃんが敏感なのはこのお香のおかげ」


ベッド横の棚に目を向ければ静かにお香が焚かれていた。


「このお香はね、女性限定で媚薬効果があるんだ。体内に取り込めば取り込むほど清花ちゃんの身体は敏感になっていく」


「なに…それ…」


「最初は効果が薄いんだ。意識も理性もちゃんと働いてるでしょ?でもこれが1日、2日って取り込み続ければ意識も理性も無くなる」


「…」


「即効性が無い分副作用とかは無いから安心してね。お香がきれたら効果は無くなるけど、またお香を焚けば体は覚えてるから効果は強くなる一方」


文字通り体内に取り込めば取り込むほど体が蝕まれていく…


本当に心も体も自由はないんだ…


この寝室に広がる甘い匂いがこのお香…


「まだお香焚いてからそんな時間経ってないのに喉でイけるのは才能だよー!良かったね!」


「良くない…」


「ん?」


「良いわけないじゃん!こんなやり方しなくたってそのまま売ればいい!殺して臓器でも何でも売ればいいじゃん!」


「それじゃダメなんだよねー…うちを使うお客さんは普通じゃ満足しないから。政治家とかお偉い社長さんとかが使うからね、ただの玩具にはなんの興味も示さないんだ。殺しはしないし、ちゃんと美味しいご飯も食べれるし、趣味もある程度なら許せるよ?それでも不満?」


「不満に決まってる!」


勢いのあまり立ち上がると足腰に思ったように力が入らずよろける。


「おっと…いきなり立ったら危ないよ。不満でも諦めるしかないね?だって清花ちゃんはこっから出られないもん」


私の体を支え、よしよしと頭を撫でる。


「最悪…本当に…最悪」


「可哀想な清花ちゃんには悪いけど、話し終わったなら続きしてい?もう我慢できないんだけど」


「は?…なんで…」


1度出したはずのそれはそそり立っていた。


「だって清花ちゃん無様で可愛いんだもん」


にこりと悪魔の笑みを浮かべた男に今度は押し倒された。











「清花ちゃん、気持ちい?」


「んっ…よく…ないっ…」


「そっかぁ、僕下手だからなぁ」


このやり取りは何度目だろうか。


こいつは良い所を的確に当てながらもわざと絶頂までは与えない。


私に「気持ちいい」と言わせたいがためだろう。


「はぁっ…ん、ぁ……ぃ…く」


「んー?」


わざと良い所から外してくる。


行き場の無くなった快楽が冷めていく。


快楽を求めて腰が動いてしまう。


「ぅぅ…はぁ…も、…はやく…」


「わかんないなぁ」


「もっと、おく…」


体が切なくなって自然と涙が湧き出てくる。


こんなの嫌なのに…いつもより体が敏感なせいでどうしても快楽を求めてしまう。


「清花、気持ちいい?」


「ぅ…るさ……んんっ」


「じゃあずっとこのままだね」


お香の効果も相まってか、頭も働かなくなってくる。


ぼーっとした頭で考えるのは快楽のことだけで。


「気持ちいい」、それだけと言えばそれだけかもしれないが僅かに残っている理性がその言葉を拒む。


「はやく…っ」


「こんなにしてるのに気持ちよくないの?」


ぐちゅぐちゅとわざと音を出してくる。


シーツまでぐっしょりと濡れて、熱を持った秘部とは反対にひんやりとしている。


もう脳みそが溶けそう…


「清花」


あぁ…もうだめだ…


はやく…イきたい…


「もっ…きもちい…からっ!…はやく…」


「今回はそれで許してあげる」


「あ"ぁっ!!」


腰を捕まれ奥までソレが入って来た瞬間に達してしまった。


目の前にチカチカと火花が散る。


「はっイくの早すぎ」


楽しそうに私の最奥を突き上げてくる。


誰のせいで…なんて、小言を言う余裕もなく首を振り、込み上げてくる快楽を防止する。


「あ"っ…ま"っ、て…イってる…っ!」


「うるさい」


「ん"ぅっ…」


イヤイヤと首を振る私の口の中に指を入れてくる。


イってるのに…また次の波が押し寄せてくる。


「あーガクガクしちゃってかわいーねぇ」


「っふ……ん"っ…ぁ…ぅ」


もう何もかんがえられない…


どこかに飛んでいきそうな感覚でシーツを力いっぱい握る。


無意識に口に入れられている指を噛んでしまう。


「すげーその顔そそる」


恍惚とした表情を浮かべる。


もうずっとイきっぱなしの体は壊れたように跳ね続けている。


私の口の中に入れていた指を抜き、代わりに私の両足を掴み上げる。


「あ"ぁっ…いやっ!これ、ふかっ…ぃ…ああっ」


今までの体位よりも深く奥に刺さり、逃げることも許されずただ快楽を与え続けられる。


ニヤニヤしながら私を見下ろす悪魔。


もはや喘ぐことすらままならない。


「中に出すね」


中に熱を感じたと同時に意識を手放す。


あぁ…もう私は本格的にだめになったんだ…

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