甘い蜜

優白

終わりで始まり

花のように清らかに育って欲しい、なんて付けられた私は完全に名前負けしてて…。


花のような可憐さはおろか、汚れしかない私は清らかでもない。


馬鹿馬鹿しい。











「清花っ…」


切なげに私の名前を呼ぶこいつは…誰だったっけ。


私に覆い被さり腰を振っている。


「ちょっと…跡付けないで…」


首元に吸い付く男を防止する。


なんでか私を抱く男達は独占欲が強かったりするのでトラブルを避けるために跡は付けさせない。


誰が1番なんて無いのにね、馬鹿らしい。


「ごめん…も、イっていい…?」


「ん、いいよ」


そう言ってワックスで固められた男の髪を撫でてやる。


私から触れられたという興奮材料からか、呆気なく男は避妊具越しに熱を吐いた。


こんなのなんの意味も無い。


ストレス発散、暇つぶし、はたまた温もりを感じるためか…名前も知らない男に抱かれる。




「ねぇ、清花って潔癖症?」


「なんで?」


「だってキス嫌がるじゃん」


「んー、あんなの唾液の交換会じゃん、きもい」


「唾液の交換会って…」


男に後ろから抱き締められながらそんなくだらない話をする。


ぎゅっ…と抱きしめられる力が強くなる。


「清花…俺と付き合って?」


「無理」


「俺、本当に清花のこと好き。付き合ってくれるなら女遊び辞めるし。てか清花とこうなってから他の女抱いてないし…大切にする。だから…」


「無理なものは無理。私そうゆうの求めてないから」


我ながら冷酷だと思う。


何度か身体を重ねてはいるが名前すらろくに覚えてない。


男に抱かれている腕を解き、服を着る。


「俺の事嫌い…?」


「好きとか嫌いとか無い。身体だけの関係」


あからさまに落ち込む男を横目に家を出る。











「もう一杯飲みに行くか…」


そして私は本日2度目の行きつけのクラブに足を運ぶ。


踊り狂ってる人達には見向きもせずBARコーナーに行き適当にカクテルを注文する。


飲みながら周りを見渡せば、ちらほらと見覚えのある顔がいる。


チラチラとこっちを見てくる男は大体ヤったことがあるやつ。


こっちに話しかけてこないのはそうゆう約束だから。


1.私を見かけても話しかけないこと。

2.私が他の男と居てもほっとくこと。

3.私に執着しないこと。


さっきの男でだいぶ面倒くさくなっているので軽く飲んで帰るか…なんて考えていると、あまりにも場違いなスーツ姿の男が隣に座った。


「お嬢さん、仕事探してない?」


「は?」


「稼げるよ」


そう言って求人情報が記載されたカードサイズの紙を見せてくる。


綺麗で可愛い部屋で紳士にご奉仕。

日給6万円〜

仕事部屋とは別に2LDKのマンションを住まいとして提供!

家賃光熱費無料!


いわゆるソープとか風俗とかそうゆう類のものとは分かったが、日給6万は怪しすぎる。


「お嬢さんなら日給10万出すよ」


「お断りします」


男に紙を返し、カクテルを飲み干しその場を後にする。


「残念」


そう言ってニヤリと笑う男に私は気付かなかった。











「ん…ここは…?」


甘い香りに包まれながら、知らない部屋で目を覚ました私は辺りを見渡す。


キングサイズのベッドに質のいい家具。


シンプルだが所々に淡い桃色が使われているあたり女性の部屋だろう。


ベッドから起き上がり、寝室らしき部屋を出ると広々としたキッチンと6人掛けのダイニングテーブル、高級感あるソファと壁一面の大きなテレビなどが置かれている。


あまりにも豪華で広すぎる部屋に唖然としていると、ガチャリと音を立てて扉が開いた。


「あ、起きたんだぁ!ここ君の部屋だから好きに使ってね」


「は…?」


私と目が合うなり人懐っこく微笑む金髪の少年は訳の分からないことを言っている。


私の…部屋?


「僕は君の教育係の高橋翔(たかはしかける)よろしくね!清花ちゃん!」


「教育係…?てかなんで名前…この部屋が私の部屋ってどうゆう…」


「あれ?何も聞かされてないの?」


「…」


「綺麗で可愛い部屋で紳士にご奉仕!日給6万円から!」


「あ…」


「これに釣られて来たんでしょ?」


不思議そうに首を傾げる少年。


「それ、断ったし…なんかの間違い…」


「あーそうゆうことか…あいつのお気に入りってことね…」


クスクスと笑う少年。


あいつ…?誰のこと?


もうなんでもいいから帰ろうと少年が入ってきた扉に向かい、ドアノブに手をかける。


が、開かない。


押しても引いてもガチャガチャと音はするが開かない。


「なんで…」


「無駄だよ。外から鍵かけてるから僕が指示するまで開かない」


閉じ込められたという事実に血の気が一気に引く。


窓を探すがここで初めてこの部屋に窓がないことが分かる。


「ここから出して」


「んー、無理かな!そもそもここにどうやって来たか覚えてないでしょ?」


「覚えて…ない」


「清花ちゃんは誘拐されてここまで来たので帰れません。清花ちゃんにはこれからいろーんな気持ちいいことを身体に覚えてもらって、一人前になったらお客さんを取ってもらいます。あーでもあいつのお気に入りならあいつに飼われるのかな?まぁそんな感じで清花ちゃんがこの部屋から出られるとしたら従順な雌になってからかな!」


あっけらかんと話す少年の口からは理解し難い言葉が次々と出てくる。


「拒否権は…」


「無い」


二つ返事でにっこりと笑う少年が悪魔に見えた。


あぁ…私の人生こんな所で終わるんだ…

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