第21話 水棲モンスター新登場
DPが溜まってきてそろそろ使わないともったいないような気がしてきた。
今後は俺なりに一応考えてみた。農業の発展や、鉱業に力を入れるのも良いけれど、やはり水産資源を作るのは重要だろう。
なにせ、野菜や穀物だけだとどうしても栄養が偏ってしまう。魚も食べられるようにして安定してタンパク質を摂取できるようにしたい。
今のところ釣り堀で少量の魚を釣れるだけである。これを魚の養殖場にするためには、水棲モンスターを増やす必要がある。
釣り堀を作ったことで水棲モンスターを新たに獲得できるようになっている。
DPを使って水棲モンスターを解放するのは良いんだけど、どの水棲モンスターをこのダンジョンに呼び寄せるか。
それをしっかりと考えないとな。
とりあえず、現状で出せる水棲モンスターをピックアップしてみよう。
・カッパ(必要DP:1000)
種族特性1:キュウリ生産量アップ
種族特性2:水泳強化
戦闘評価:C
説明:泳ぐのが得意なモンスター。キュウリの生産に携わるとキュウリの生産量が上がる。
・マーメイド(必要DP:1000)
種族特性1:安眠の歌声
種族特性2:超再生
戦闘評価:D
説明:歌声で対象を眠らせることができる。睡眠効率が上昇する。また、傷ついてもすぐに再生する。
・ハンギョジン(必要DP:1300)
種族特性1:水陸両用
種族特性2:養殖生産アップ
戦闘評価:B
説明:陸上でも水中でも高いポテンシャルを発揮できる。魚を養殖すると生産効率が上昇する。
とりあえず有用そうなのはこの3種か。カッパは単純に今後キュウリ畑を作るなら、作っておいて損はない。
水泳強化は……うん。カッパは泳ぎが得意だね。水中戦に持ち込まれた時はカッパに敵うようなやつはいないだろう。
そして、次にマーメイド。安眠の歌声は聞いたものを眠らせる効果がある。
戦闘中に相手を眠らせて無防備にできるという強い能力でもあるが、日常生活においても睡眠の質を高めるということに役立つ。
超再生も人魚は再生能力が高いため、持久戦に向いているかもしれない。
ただ、やはりマーメイドは特殊能力が強い分、非力なのが難点。力を有する作業にも向かないし、更に言えば陸上で活動ができないデメリットもある。
最後にハンギョジン。単純な戦闘能力ならこの3種の中で最強だろう。
もし、勇者やその他人間を迎え撃つつもりならば、戦闘力重視でハンギョジンを作るべきだと思う。
カッパは陸上では戦闘能力は高くないし、マーメイドに至っては陸上戦そのものができない。
その点、ハンギョジンは半分は人間であるため、陸上でも問題なく活動できる。
更に魚の養殖の生産性をあげることができる。これは今のダンジョンにとって大きなメリットになりえるだろう。
さて、消去法で考えてみるか。
まず、カッパを最大限活かすなら、やはりキュウリ畑を作らなければならない。
となると今の農場のいくつかを潰してキュウリ畑にするか、それか新たに農場を作ってそこのスペースにキュウリを作らなればならない。
そうなってくると必要DPが跳ね上がってしまう。
将来を見越してカッパを作るというのもありだけど即戦力としては一段劣ってしまう。
マーメイドに関しては、安眠の歌声でモンスターたちを眠らせれば疲労回復の効率は上がるかもしれない。
でも、疲労回復効果は現状だと温泉と温泉スライムによるリラクゼーションで間に合っている感ははある。
不眠に悩まされるモンスターが増えたら検討の余地はあるけれど、今のところはDPを増やしてでも仲間にしたいものでもないな。
となると、消去法でハンギョジンが最強と言うことになってしまう。
まあ、ハンギョジンは力もそれなりにあるし、あらゆる作業で活躍してくれるだろう。
水陸両用で活動できるから痒い所に手が届きすぎる。
その分、必要DPも高くなってしまうけど……性能を考えれば十分おつりがくるだろう。
いざとなったら、戦闘もできるくらい強いのでやっぱりハンギョジン一択か。
というわけで、俺はダンジョンのクリスタルに触れてDPをそこに注ぎ込む。
「DP1300を消費してハンギョジンを解放!」
これでハンギョジンがこのダンジョンに出現するようになった。
すぐに出現はしないけれど、しばらく待っていると上限数に到達するまでは増えてくれるだろう。
というわけで、俺は俺で作業をしよう。この作業が終わるころにはハンギョジンが出現するはずだ。
俺はモンスターたちが集めた素材を使ってクラフトを始める。
今日は保存食を作ってみよう。食材もいつまでも置いておくと腐ってしまう。そうならないように保存が効くように加工しなければならない。
食料が増えてくるとこういう処置も必要になってくるからな。
◇
クラフトをし続けること数時間。少し休憩がてら散歩してみる。
釣り堀に顔を出してみると、釣り堀の中に巨大な影が見えた。これは魚ではないな。
「おーい」
俺は釣り堀の中に呼びかけた。すると釣り堀からバシャアアと音を立てて、青い鱗の肌を持った人間が出てきた。
目は魚のようにギョロっとしていて、いかにもなハンギョジンである。
「やあ。アンタがこのダンジョンのボスかい。オイラたちを生み出してくれてありがとう」
「ああ。俺はイビルハムだ。よろしく」
「オイラはハンギョジンのシャークだ。よろしく」
最初に生まれたハンギョジン。名前はシャークか。まあ、一応覚えておこう。
「イビルハム様。オイラはこのダンジョンでなにをすればいいんだ?」
「とりあえず、この釣り堀にいる魚を養殖して欲しい。後から生まれるハンギョジンにもそう伝えてくれ」
「はい。任されましたっと。それじゃあ、早速この釣り堀にいる魚を集めて、繁殖させるように誘導します」
シャークは再び海に潜っていった。これで魚の増える速度が上がってくれるだろう。
俺はこの釣り堀から去ろうとしたら、サバンとまたシャークが水面から顔を出した。
「あ、言い忘れていましたが、もし今後、養殖で必要なエサとか道具、その他経費がかかることがあったら、相談しても良いですか?」
「ああ。遠慮なく言ってくれる方が助かる。現場だけで抱えられても逆に困るからな」
いい組織とは現場と上層部の連携が取れていることだ。ここで、現場の勝手な判断で動かれても困る。
現場が資材が足りなくて困っているのであれば、こちらも力を貸すつもりでいる。
「ありがとうございます。一応、限られた資源でがんばってみますが、もし運用の限界がきたら相談させてもらいます」
「ああ。よろしく頼む」
魚の養殖にもエサとかそういうものも必要だからな。エサの購入もDPを使うか。
必要経費ならばいくらでも払う。発展のためならば喜んで払おう。経費を出し渋って、機会損失をするのはもったいない。
コストカットもやりすぎると良くないからな。
とまあ、そう言いきれるくらいにDPを稼ぐ土壌をしっかりと作らないとな。
金払いが良い方が得をすることはわかるけれど、ない袖は振れない。
特にこのダンジョン経営に至っては借金という概念がない。今あるDPで何とかしないといけないのは逆に辛いところだ。
現実の経営なら借り入れして事業を大きくしてから返すなんてことができるけれど、DPを借金なんてことはできない。
まあ、借り入れにはリスクがあるし、そういうリスクとは無縁でいられるのはメリットと言えばメリットか。
完全自己資本経営をこれからもがんばっていくしかない。
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