14. 暗闇
最上階フロアは、今までにないほど忙しなく人が行き来し、セキュリティ専門班まで珍しくフロアにいた。いつもは地下のセキュリティ室に篭っているような連中まで駆り出されているという事だ。
「たいそうな賑わいだな」
エレベーターを降り、その光景を目にしたラドが、まるで他人事のようにぽつりと呟いて片眉を上げた。お前のせいでこうなっているというのに。リーダーからの呼び出しは最悪な事態を指しているかもしれないのに。呑気なラドと打って変わって、はぁ、と肩を落として歩いていると、突然誰かとぶつかって体中に衝撃が走る。何事かと驚いて目を見開いていてると、俺に突進をしてきた男は尻もちをついてしまったらしく、いてて、と腰をさすりながら散らばってしまった資料や本を掻き集めていた。
「す、すみません…大丈夫ですか」
心配しつつそう声をかけながら俺も散らばっていた資料を集めて手渡すと、ネークさんは半ば興奮気味に口を開く。
「クラウドに侵入されたらしいね。彼にとったらここのセキュリティなんてないようなものかもしれない」
少年のようにキラキラと目を輝かせるネークさんは、ハンターである以前にバンパイアの熱狂的な生態学者であった。
「君達もゼルのところに行くんだよね?」
「はい」
「呼び出し食らったか、ふふ、そうだよね。俺も用があったから一緒に行こう!」
ネークさんは遊園地ではしゃぐ子供のようだった。今にもスキップし出しそうだし、あれもこれもと親の手を引いて遊園地を堪能する子供にしか見えない。何がそんなに楽しいのか、俺にはきっと一生理解できない。ネークさんはリーダーの部屋をドーンと派手に開けると、「ゼル、君の阿呆面を見に来たよ」と笑顔を振り撒いている。
シャルは相変わらずソファの上で、何やらノートパソコンと睨めっこしており、リーダーは大量の資料に埋もれていた。顔を出して俺達を見ると、かけていた眼鏡を外してデスクに置く。目頭をきゅっと押さえ、顰めっ面をするあたり、相当眼精疲労に悩まされている。
「まぁ、座ってくれ」
そう言われ、ネークさんはシャルの横に座り、俺とラドはその対面に座る。リーダーはデスクから書類を取り出すと、シャルを見下ろして指示を出す。
「昨日尋問していたあのバンパイアが殺された。その時の監視カメラの映像を見てくれて」
やはりカメラに映像は残っているらしい。これはもうどうしようもないし、全く逃げ場がないと、俺の心臓は急に落ち着きを無くし、鼓膜の内側で大きな太鼓が一定の速いリズムで鳴っている。あまりの緊張に手が若干震えている事に気付き、俺はぎゅっと拳を握って膝に置く。ラドは足を組み、背もたれに寄りかかり、あまりにも余裕だった。
「そうそう、これが見たかった!」
ネークさんは満面の笑みである。シャルがパソコンをテーブルに置くと、ネークさんは身を乗り出して画面を凝視する。画面はまだ静止しており、暗い檻の中にあのパンパイアが虚な目をして佇んでいた。柵を掴んで叫ぶわけでもなく、ただ何もない宙を眺めている。シャルは再生ボタンをクリックした。
「ゴッド様…ゴッド様…」
バンパイアは立ったままそう呟いていた。それが数十秒続き、突然、キィキィという甲高い鳴き声が遠くから聞こえる。コウモリだ。真っ黒なコウモリは器用に柵の間を通って中へ侵入すると、バンパイアの目の前で姿を表す。俺は息を呑んだ。全てがバレてしまえば、ラドはここから逃げるしかない。捕まってしまえはま、永遠の地獄だ。逃げられたとしても、その姿が世の中に公開されてしまえば地上では生きられない。
コウモリは人の姿に変わった。目を細めて見ていた俺の前に映るのは、全身黒ずくめで、フードを深く被り、カメラに背中を向けている誰か。顔は、見えない…、このまま背中を向けていろ。そう考えていると、男は手をバンパイアの方に伸ばした。バンパイアはその顔を見て顔色を変え、悲鳴を上げようと口を開けた瞬間、男はそのバンパイアに触れた。触れた瞬間、そのバンパイアは跡形もなく灰と化したのだ…。そうしてコウモリに戻るとまたカメラの外へと消えていく。そこで映像は停止された。
噂程度に聞いてはいた。クラウドは他のバンパイアをコントロールする為に力を持っている。つまり王が自分の駒を殺すのも簡単だと。逆も然り、死から救う事も。例えば、ニールのように。だが灰化させるのも容易じゃないのだろう。触れただけで灰になるのは一部で、ビル等力のある者を消すのはそう簡単ではない。このバンパイアに力はなかった、だが、ラドにとっては脅威だったのだろう。自殺しに行くほどには。
「おぉー、これは凄い! 何年経ってもその力は衰えないようだね。恐ろしいね! で、これだけ? 抜粋したんだよね? これが録画されているオリジナルテープ、欲しいんだけど」
ネークさんがそうマスターに伝えると、マスターは片眉を上げた。
「十数時間あるんだぞ。ここしかクラウドは映っていない」
「だとしても欲しい。残りのカメラは? ダメだった?」
「壊されていたね」
「そっか。ならこれは見せる為、って事だ。やっぱりオリジナル頂戴。いや、貸して。貸してくれるだけで良い。お願いします、一生のお願いです」
ネークさんはこれでもかとリーダーに擦り寄り、上目遣いでお願いを連呼している。それをシャルが鬼の形相で睨み付けていた。特に何も言わないがそれが怖い。リーダーは渋々オリジナルテープを渡し、「無くすなよ」と念を押す。
「無くすわけないよね! 俺の宝物だ」
この人の脳みそは全く理解が出来ない。しかしあの録画にラドの姿は映っていなかった、となるとなぜ、俺達は呼び出されたのだろう。俺は疲弊と顔に書いているリーダーを見上げた。リーダーはデスクに寄りかかり、腕を組んでいる。
「あの、俺達が呼び出されたのは…」
「あぁ、君達には特殊任務を遂行してもらいたい。今後ハントの時にはゴッドという得体の知れない存在について、何か知っていそうなバンパイア、もしくは繋がりのありそうなバンパイアは生きたまま捕獲すること。彼らはクラウド、チェック、バースの情報に関して簡単に口を開くのではないかとね」
「なるほど……承知しました」
ラドの顔を知らないバンパイアを連れて来るしかないだろうなと口を歪めた。だがラドは妙な雰囲気だった。表情はいつもと変わらずにこやかで愛想が良い。何が違うかと言われれば俺には分からないが、何か少し殺気立っているような気がするのだ。リーダーが今後について軽く説明し、もしバンパイアを捕まえた時は地下にそのまま連れて行くようにと手順を説明されるが、その間もラドの様子はおかしく、リーダーの言葉が耳に入ってこない。ラドのそれはきっと、リーダー達には気付かれないほど些細な違いなのだろうが、何かが異様だった。
以上だ、とリーダーが締めた。俺達は部屋へ戻された。ざわざわとまだ騒がしいフロアを抜けて自室へ。エレベーターを降りて、自室のドアに手を掛けると、ラドは足を止めてぴくりと眉を顰め、ドアをじっと見つめている。
「おい、ラド…?」
声を掛けると、中の微かな音を聞くようにラドは首を少し傾げ、視線だけを俺に向けた。
「何があっても離れるなよ」
「わ、分かった」
何があっても、なんて何があるのか未知数で怖い。ぐっと唇を噛む。万が一、この部屋の中で戦闘になってしまったら、俺はどう対処するのが正解なのだろう。武器なんて持って来ていない今、まずは武器の棚から悠長にナイフを取り出す? そんな時間ないだろう。だったらすぐにキッチンへ入って包丁を…。だが、相手がリアだったら。ラドがここまで殺気立たせる相手だ、リア以外にはいない。だとするならば、何をしたって無駄だ……。
カチャリと静かにドアを開ける。中からは奇妙な事に音楽が流れていた。それは俺が昔よく聴いていたジャズのレコードで、今はカバーを掛けて暫く聴いてなかった。廃盤になったそのレコードに針が落とされ、誰かがそれを聴いている。聞き慣れた音楽が部屋を流れ、俺はラドの後を追いながら中へと進んでいく。
「まさかあなたが、あの時の青年だとはね。ロガロだなんて騙されました」
レコードに針を落としていた男に、俺の足は石になってしまったかのように一歩も動かなくなった。リアだろうと予想していた俺にとって、その男がいる事が、いや、ラドの前に現れた事が何か言い知らぬ覚悟を見たようで怖いのだ。
ラドを殺される……。
俺は武器棚の横に置いてあったジュラルミンケースに視線を落とす。奪われていない。大丈夫…。再び男へと視線を戻した。ラドの記憶を奪い、政府に売り、実験体の為に恋人だったラドを殺そうとした男へと。
「何しに来た」
ラドの唸るような低い声に、エヴァは何も答えず、レコードが置いてある棚の横に立ったまま数枚のレコードを手に取っている。ラドの声に表情ひとつ変えない。同じバンパイアなら、こいつだってあのバンパイアと同じように一瞬で灰になるはずだが、ビルと同等の力を持っていたとしても、ラドに勝てるはずがないのだが、エヴァは動揺ひとつ見せない。エヴァはレコードを見ながらようやく口を開いた。
「挨拶をしに、でしょうか。…これも名盤ですね。本当に趣味が良い」
「エヴァ、」
ラドが眉間に皺を寄せて一歩近付くと、エヴァはレコードを元の位置に戻しながらラドを見ずに、「記憶、取り戻したんですって?」と訊ねた。
「あぁ、完全じゃないけどね。ある程度は思い出したよ」
「へぇ、そうですか。あのビデオテープは、見たんですか」
「ゴッドが渡してきたものだろ。あぁ、見たよ。君が長々とひとり語ってるビデオ、良いもんだったよ」
「でしょう。でも、あれをリアが君に渡してしまうとは予想外でした」
「君が渡せと言ったんじゃないのか」
「渡せとは言っていませんし、渡すなとも言ってません。僕が彼の前に現れたのは君がペットをつけた後ですよ、彼が人のものを勝手に盗んで君に渡してしまうとは予想できませんでした」
「それは嘘だね」
「どうしてそう思うのです?」
「お前はずっとゴッドを見てきたろ。お前は自分を死んだ事にして存在を消し、戦争にも参加せず、悠々と高みの見物をしていたろう」
「僕は兵器じゃありませんから。僕は君を止める為だけの生き物ですから」
「お前に俺が殺せると?」
「えぇ、思ってます」
「悪いが、俺は二度とお前に靡かないよ」
「ふふ、アハハハ、自惚れですね。僕がまたあなたと昔のような関係に戻りたいと思ってる、そうなればあなたは僕を愛し、僕はあなたを殺せる、そう考えているのならとんだお門違いをしています。愛する者にしか奪えない命だなんて迷信なんですよ、ラド」
エヴァはそういうと肩を揺らし、にやりと笑った。
「あなたの世界は終いなんです」
瞬間、ゾッと背中に悪寒を感じた。ひっと喉が鳴る。心臓が凍り付き、俺は目を見開いて、その恐怖を飲み込めずにいた。後ろを振り向く事ができない。振り向いてしまえば、何もかも終いになってしまう。怖い。怖い。怖い。
怖い。
「やぁ、シン。今回の家出は長かったね?」
脈が速くなり、息が苦しくなる。
「他で美味しい餌を貰えていたみたいだね。少し肥えてしまったかな? 僕が美味しい料理を毎日作ってあげていたのに、ジャンクなものばかり食べるからそうなるんだよ。さぁ、僕と一緒に帰ろうか。君を愛してるのは、僕だけなんだから」
冷たい手が背後から体に纏わりつき、ぐっと大きな掌が首を絞める。片方の腕は鎖骨に沿って肩を抱き、背中は隙間なく密着し、殺意の籠った掌はじりじりと気道を潰していく。冷静になれと、こいつと真正面からぶつかるつもりだったんだろうと、必死に自分を鼓舞するが、いざ男の声を聞くと体は蛇に睨まれたように動かない。頭は真っ白になり、何も考えられない。
ラドは俺の後ろにいる男を見ると、奥歯を噛み締めた。離せと怒鳴るわけでもなく、ただじっと男を見ている。空気が重く冷たい。俺は何とかこの状況を抜け出そうと、必死になって頭を回転させる。一瞬の隙で良い。一瞬でも隙が生まれればこの男の腕から抜け出せる。幸い、こいつは俺を甘く見ている。ハンターとしての俺を知らない。だから俺の両腕両足は自由で、男は俺が逆らわないと思っている。大丈夫。ラドをこんなやつに渡したくないから、俺はラドを助けにあの古城に行ったんだ。こいつの言いなりになってたまるか。男は天使のような微笑みが張り付いたその分厚い仮面をつけたまま、ケタケタと肩を震わせた。
「僕はね、シン。悲しいんだよ。飼い犬が2匹揃って家出しちゃうから。一緒に帰って来てくれるはずだったんだけど、どこで間違えたのかなぁ」
俺はあんたの犬じゃない、ラドもそうだ。だからもう俺達には構わないでくれ。そう訴えたかった。こいつの腕から抜け出して、ナイフをこいつに向けて振り下ろしてやりたい。なのに、今の俺は何ひとつできない。このままでは劣勢。何とかしなければ、何とか。戦ったとしても勝ち目はないかもしれない。だが、抵抗して逃げ切れるくらいの隙は作れるだろ。そう考えを巡らせていると、リアは首を傾げてラドを見つめた。
「これはお前の責任だよね、ラディー。シンが無様に殺されるのも、お前の責任だ」
「待て! ゴッド、あんたの望みは俺だろ? シンには手出ししない代わりにという約束だったはずだ」
「約束かぁ。よく言えたね? お前が先にその約束を破いたんだ。勝手にパーティーを抜け出してさ、僕は大恥をかいたよ」
「そ、れは……」
「さ、お別れの時間だ。ラディー? シンにさよならは?」
リアはきっと嫌な笑みを浮かべているのだろう。ラドは必死だった。
「ゴッド、分かった。…この命、好きにしてくれて良い。だから、頼む。その手を離してくれ…、シンから離れてくれ」
やめろと、言いたかった。でも喉に纏わりつく掌に声帯を潰されるように、声が出なかった。身を捩っても、ただ足掻くだけでリアを喜ばせるだけ。
自己犠牲になるのが最善だと思っているラドを止めたい。力を持つ者の宿命だと、ラドは言うのかもしれない。でも俺はそんなの信じない。お前の犠牲で生かされるのはご免だ。絶対にご免だ。
「そうだなぁ、ラディー。僕の言う事をひとつ、聞いてくれる?」
「あぁ。聞いたらシンから離れるんだな?」
「うん、いいよ、離れてあげる」
リアはエヴァの方を見ると、嬉々とした声で「渡して」と指示を出す。エヴァはラドに近付くと、腰に挿していた銃を取り出した。それを見た瞬間、心臓が凍った。最悪のエンディングを想像しては気分が悪くなる。ごくりの生唾を飲み込むと、耳元でリアが楽しそうに笑った。
「楽しもうね、シン」
体が震えた。エヴァがラドに冷たく言う。
「あなたを殺す為の銃です。武器商人から手に入れたのでしょう? 行方を探して、持ち主を突き止めました。運命だと思いました」
突き付けられたのはBlack Loverだった。そうか、既に銃を手に入れていたんだ。真正面から撃ってもラドを殺せやしない。だから、こんな事を…。ラドを殺せる唯一の銃に、俺は勘弁してくれと身を捩った。
「ラド、あなたは愚かだ。生み出したものの価値を何も分かってなどないのだから」
やめろ。やめてくれ。
「こうして使う時が来たのです。僕も永く生きた甲斐がありました」
「さぁて、ラディー。銃を受け取って」
ラドは眉間に皺を寄せたまま、何も言わず、その真っ黒な銃を受け取った。俺の手の震えは徐々に大きくなる。止めなければ、手遅れになる。想像をしては怖くなる。
「それで自分の心臓を、撃って」
リアは俺の耳元で甘く囁くように吐いた。ラドは目を閉じると、覚悟を決めたようだった。その様が耐えられなかった。覚悟なんか決めないでくれよ。
「リ、ア…!」
俺は苦し紛れに掠れた声を絞り出す。リアはそっと首に掛けていた手の力を少し抜くと、「ん?」と俺に顔を近付けた。俺は咳き込みながら、咄嗟に言葉を振り絞った。
「俺が戻る……。俺があんたの犬は戻る、から、だから…」
リアがギュッと腕に力を込めると、俺の体を抱き締め、愛おしそうに呟いた。
「ありがとう。その言葉を待っていたんだよ」
「なら、ラドは…」
「うん、ラディーが死んだ後に、ね?」
そう吐き捨てると同時に大きな掌が俺の口を塞ぎ、俺の頭は真っ白になる。身を捩っても無駄、足掻きは体力をなくすだけで、何も意味を成さない。思考が鈍くなる。恐怖で何も考えられななくなる。
「さ! ラド、5秒以内に自分を撃って。じゃなきゃ君の目の前でシンを殺すよ」
「……わ、分かった。分かったから、シンには手を出さないでくれ」
やめろ、やめてくれ。そう叫んでも聞こえない。声にならない声が、虚しく宙を漂うだけだった。ラドの射抜くような真っ直ぐな瞳に嫌な決意が見える。やめろ。頼むから、やめてくれ。
「さーて、カウントダウン。ごー、よーん、」
楽しそうなリアの声は耳に入らない。ラドを止める為にはどうしたら良いのか、焦れば焦るほど頭は真っ白になってしまう。篭るような音としか捉えられない声を吐き続け、何も伝えられないのが辛く、もどかしく、何より悔しく、俺は必死になって訴えた。
「さーん、にぃー」
でも、ラドの決意は堅い。その銃はお前の命を奪えるというのに。どうしてそうも簡単に投げ出してしまうのだろう。俺なんかの為に、命を差し出してんじゃねぇよ。欲しくねぇよ、お前の命なんて。ぎりりと奥歯を噛み締める。裏腹、ラドはなんだかすごく嬉しそうに笑った。その笑顔を見た瞬間、何かが頬を伝った。あまりにも自然だった。
「いーち、」
ラドは銃口を自分の心臓に向けると、引き金に指をかける。止めなければと、身を捩って抜け出そうとして腕を伸ばす。でも、どんなに伸ばしても指先は空を掠めるだけだった。
「ぜーろ」
ラドの瞳はじっと俺を見ていた。口角は上がり優しく笑う。
「愛してる」
骨に響く破裂音。時が止まった。世界は無音になり、何もかもが止まってしまった。全てが、終わったのだ。吐き気がした。何が現実なのか分からない。火薬の匂いがツンと鼻を刺激する。
ラドは、もう、いない。
リアの手も体も俺からは離れたが、俺はそこから動く事は出来なかった。へたり込むことも、泣き叫ぶ事も、何も出来ずにただ呆然とそこに立ち尽くす。
「呆気のないものだなぁ。バイバーイ、クラウド・ディラー」
リアの満足そうな甘い声を聞く。俺はただ見つめていた。ラドの姿の代わりに真っ暗闇のようなバラの花びらが宙に舞って、ひらりと落ちる姿を。
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