9. 過去

ラドが部屋に戻って来たのは、翌日の夕方だった。手には古いビデオテープを持っていた。



「……これ、観れる機械ってあったりするだろうか」



どこ行ってた? 誰がそれを渡した? そのビデオテープには何が映ってんの? 言いたい事は山程あった。でも俺は何ひとつ言えず、ラドと共に地下2階の資料室へと向かう。なぜ、何も言えなかったのかは分からない。妙な意地があったのかもしれない。俺はお前の事に興味はない、好きなようにしろ。そんな意地を張る時点で自分の感情と向き合えと言われている気がして嫌気がさす。


資料室の一角に設置された映像室には古い資料としてフィルムやビデオテープ、ディスクがずらりと壁に並んでいて、見る為の機械も一式揃っている。モニターとそのテープに合いそうな機械とを繋ぐ。無数のコードを引っ張り出し、これか、これかと挿していく。悪戦苦闘し、モニターに映像が映し出されるまで20分は掛かった。モニター前に用意されている座り心地の悪そうなソファにラドと腰を下ろした。ジジジ……と接続に難色を示すような嫌な音が流れ、画面はしばらく砂嵐だった。



「やっぱ、見れないんじゃないの」



見れなきゃ良いのにな。そう思ったが口には出せず、ラドは「もう少し待ってみよう」と眉を顰める。その時、『あー、あー』と音声の質は悪いが、聞き慣れた声がモニターの向こうから聞こえてくる。



『あれ、これ映ってる?』



『映ってます。ほら、赤く光ってる。録画になってます』



『じゃぁー、始めますか』



カメラの前に男が立っていた為、画面は真っ暗だった。その男が後ろへと下がった事で、画面全体が明るく映し出され、そこには人間だった頃のラドと、あの写真の青年が白衣を着て立っていた。部屋は研究室だろう。天井の蛍光灯、黒い実験台、その上に広がる資料、本、薬瓶の数々。見た事のない機械もずらりと並んでいる。荒い画面の向こうのラドは『テストでーす』とこちらに手を振った。



『こんにちは、俺はクラウド・ディラー、プロジェクト研究チーム、第一班、アシスタントリーダー。で、こちらが…』



『エヴァ・リンクス。えっと、僕はラドと同じ第一班、リーダー。僕達は生物兵器を専門としている研究員です。えーっと…あぁ、そうだ…バンパイアですね。僕達は特にウィルスに関しての専門となります。…で、他に何か話す事あります?』



小首を傾げるエヴァに対して、ラドは肩をすくめた。



『さぁ? テストだし、音声と映像チェックできれば良いんだろ。特に何を言うとかはないと思うけど。適当に回しておけば良いんじゃない?』



『そうですか?』



『そうそう。録れてるか確認したいだけだろうし。だから適当に話してましょうよ』



『分かりました』



『あ、じゃぁ俺から質問しますよ。進捗どうです? どこまで進んでます?』



『知ってるくせに。あなたが言えば良いのでは?』



『インタビュー方式の方が言いやすいかと思ってさ』



今と変わらない笑い方をする画面向こうのラドと、その隣で目を細めるエヴァ。ふたりの距離は、ただの研究員同士、ただの同僚の距離ではないようだった。



『…進捗ですね、進捗。うーん、順調ですよ。博士の指示通り配合はA計画で滞りなく。ただいくつか懸念もあります。記憶に関してです。兵器として生み出すのであれば、記憶は邪魔になる。実験をいくつか行いましたが、記憶がある実験体のコントロールはかなり難しい。…とまぁ、こんなところでしょうか』



『ふふ、良い感じ』



『では、次は僕から。ラド、本を完成させたそうですね?』



『え、どこから聞いたの』



『さぁー? どこでしょうね。で、本当ですか?』



『まぁ、本当』



『初版本、僕にも下さいね』



『ふふ、エヴァってディストピア物が好きなの?』



『ディストピアが好きというより、あなたが書いた未来予想が気になる、というだけです。というか、我々の未来はディストピアなんですね』



『さぁ、どうでしょうね。ひとまず製本したら渡すよ』



『楽しみにしておきます。で、もうひとつ。良い?』



『どうぞ』



『本当に開けたんです? 舌』 



『開けましたよ。ほら、』



『へぇ、痛かったですか?』



『そりゃぁもう。最高に』



『……へぇ、そう』



『ふふ。そう』



ふたりの他愛もない会話が十数分続いた。ラドは何も言わず、真剣に食い入るように見ている。今、お前は何を考えているのだろうかと、その横顔を見ては不安に駆られる。必死に隠して、俺も流れる映像を見ている。しばらくして画面が切り替わった。先程のエヴァという男がひとりだけ映っていた。先程とは違い、暗い部屋にひとりだけ。彼はげっそりとやつれていた。



『これは記録用。後世に残るように。僕の名前はエヴァ・リンクス。東サザカン研究所の研究員、バンパイア計画の研究員のひとりです。バンパイア計画に関して、ここに記します』



手持ちのカメラを自分に向け、そう淡々とエヴァは語りかける。



『28A-30の実験は失敗。リシュラ博士の指示のもと、隠蔽が行われた実験体28A-30について告発をします。実験体はバンパイア計画当初から安定しており、第一のバンパイアになるだろうと期待されていたましたが、3日前の午後7時過ぎ、突然変異を起こし、監視施設から逃亡、その際3名の研究員を食い殺したと見られています。この実験体28A-30はすでに始末済みと報告が上がっていますが、これはでっち上げです。処分された遺体は別の実験体によるもの。今もなお、実験体28A-30は逃亡し行方をくらませています』



そこで一息ついた。これは何か凄く重要な歴史的証拠なのではないかと、俺は映像を睨むように見つめる。歴史に関して決して詳しいわけではない。俺が生まれる前にはもうバンパイアはいて、俺がヘルになった頃にはすでに増殖していた。だから、バンパイアが生み出された当時の事は教科書で知った世代である。もちろん、こんな研究所の話なんて教科書には載っていなかった。研究員が食い殺された事件があった事も。



『関係して、第一バンパイアの報告をします。世間では敵国を食う悪魔が何者かと騒がれ、政府はその人物を知らぬ存ぜぬを突き通していますが、彼に関しての報告となります。彼の名はクラウド・ディラー、ここの研究員であり、僕の部下でした』



ラドは表情ひとつ変えず、ただ真剣に映像を見ている。俺はなんだか嫌な予感がしていた。ラドはなぜバンパイアになってしまったのか。なぜ、記憶がないのか。



『強大な力を得た実験体28A-30が、もはや人間が敵う相手ではないと判断し、彼を殺す為に自らウィルスを体内に注射し、バンパイアへと姿を変えた元研究員です。…でも彼は何も語らず、ただひたすらに人間を殺しています。殺戮を繰り返しています。この原因は感情を失い、記憶を消した為となります。バンパイアを兵器として生み出す最低条件でした。しかし、ただウィルスを体内に入れただけでは感情も記憶もそのまま残ります』



ラドの眉間に皺が寄った。



『僕にとって彼に記憶がある事は不都合でした。彼は、実験体28A-30を殺す為に、自ら悪魔になったのですから。僕は28A-30の始末に対して反対でした。彼はウィルスを打ち、ラボで倒れていたところを、僕が見つけました。その時、思ったんです…。これはきっと神様が、28A-30をラドに殺させない為に、僕に彼を見つけさせたのだ、と』



ラドにとってこれはあまりにも残酷な現実だ……。



『だから僕は彼の記憶を奪いました』



ラドは何も言わない。ただ、その動揺は嫌でも俺に伝わった。



『彼の記憶を奪い、感情を切断し、兵器として国に渡しました。これがこの研究所で起きた真相です。今起きている隣国の惨劇に対して、僕は責任を取らなければなりません。あのクラウドを野に放ったのはこの僕。だからこそ、僕は、僕の責任を取ります。僕がクラウドを始末します。だから、みなさん、さようなら。この世界にまた平和が戻りますように』



ジジジ………と画面は暗くなり、そこで映像は終わった。ラドは暫く真っ黒な画面を眺めていた。余韻から抜け出せないように、じっと動かず画面を見つめたままだった。



「ラド…」



ラドは深呼吸をするとようやく動き出す。ソファの背に寄りかかり、「そう、か…」とぽつりと呟いた。



「おい、大丈夫、か?」



そう声を掛けると、ラドは少しだけ口角を上げる。



「ん? あぁ、もちろん」



ラドはまだどこかぼうっとしている。



「俺はいつの間にか自分で敷いたレールの上を走ってたわけだ。…滑稽だよな。未来予想と称したその世界の悪を、自から買って出るんだからさ」



「………ラド、」



過去を知る事がこいつにとって救いになったとは思えない。ただこいつを、苦しめただけだ。



「過去の事、思い出せたのか」



「……そうねぇ、なんとなく、ね?」



「そう、か」



こいつはあのエヴァという男をどう思っているのだろうか。ふたりの距離は確かに近かった。けれど、エヴァはラドを売っている。逃亡した実験体を始末しようと自らバンパイアになった男の記憶も感情も消して、武器として国に売り飛ばした男だ。


ふたりの間に何があったのか俺は知らない。それでもラドがエヴァの側にいたいと願う可能性はある。過去を思い出した事で、エヴァがラドを殺せる唯一の存在になってしまったら、ラドはエヴァに殺される可能性が高い。BLACK LOVERを作り、武器屋に流したあの男なら、きっと、今でもラドを殺したいと殺意を抱いているはずだ。


みなさん、さような。エヴァの言葉が頭の中で繰り返される。そう人間である事を捨てて、ラドを殺す事だけを考えて生きてきたのだろう。ラドが俺の前から姿を消すと言うのなら、エヴァを探し出して共に過ごすと言うのなら…。その時俺は、きっと分かったと頷く事はできない。俺は拳を握った。良い加減、認めてしまえば楽だろうか。



「ラド、部屋に戻ろう。良いワインを買ったんだ」



ラドは俺の微かな感情の揺れを読み取ったようだったが、何も触れず、「楽しみだ」と微笑んだ。ビデオテープをデッキから取り出すと部屋に戻り、ラドはソファに勢いよく倒れ込む。



「あー、たった1日部屋を空けただけなのに、全てが恋しかったよ。部屋の匂いも、このソファの硬さも、照明の明るさも何もかも。安心してしまうのは、この部屋に君がいるからなんだろうな」



武器棚の横に置いていたジュラルミンケースを開け、中の銃を取り出した。弾は一発だけ込められている。ソファに転がるラドから、俺の姿は見えていない。



「不思議だよなぁ。…俺はずっとひとりだと思ってた。けど案外そうじゃなかったみたいだ。面食いなのは変わらないみたいだけど」



ラドはそう言って上体を起こした。カチャリと銃口がその頭に当てられる。あとは引き金を引くだけ。俺は深く息を吸って、吐き出した。



「お前は、心臓を撃ち抜かれないと死なないンだろ」



ラドに怯える表情は一切ない。それは、俺にはもう殺せないと分かっているから…? そう答えが分かってしまうと、心底腹が立った。



「撃ってみたら?」



ラドはそう静かに答えた。無言で唇を噛み締めるだけでなにも答える事ができない。ラドは後ろにいた俺の方に体を向け、「良いよ」と俺を見上げる。どうせお前には撃たないだろう、そう言われた気がした。苦虫を噛み潰していると、ラドはくすっと笑う。



「…脳みそぶちまけたところできっと灰にはならないだろうよ。けど心臓を撃ち抜かれたら灰になる。でもその銃は関係ない」



「分からないだろ。愛する者が変われば、お前を殺す事の出来る相手も変わる、だろ?」



「君は俺の心が変わったと?」



「エヴァとか言うやつが、お前を殺すくらいなら、俺がこの手で…」



ぎりっと奥歯を噛み締めると、ラドはソファから降りて俺に近付いた。銃口を軽く掴むと、そのままゆっくりと下へと下ろした。



「君は俺を手放したくない。そう思ってくれていると嬉しいが、違うか?」



「………違う。お前が思っているような感情は、とうの昔になくなった。そう言ったはずだ」



それは自分に言い聞かせるようだった。厄介な感情なんて抱きたくない。



「そう? それは残念。悲しいな。でも俺の気持ちはずっと変わらないし、それは分かってるはずだ。君に心臓を撃ち抜かれたら俺は灰になる」



「撃たなければ結果は分からないって事だろ」



「だから良いって言ったろ。撃てば良い。君が望むなら、いつでも」



ラドはそう甘ったるく笑みをこぼすと、俺の頬に手を寄せた。そのまま柔らかな唇を寄せ、唇を甘噛みする。軽く唇を重ねると、俺の瞳をじっと見下ろした。



「ちゃんと最後は心臓を撃ち抜けよ」



嫌だと言ったら? 出来ないと言ったら? お前の目的はずっと同じなのだろうか。それともそれは口からのデマカセだろうか。殺せるというのは、ただのデマカセ。だとしても今はまだ信じたい。そう思ってしまうのは愚かだろうか。



「俺は君のものだ。好きにして良い。けれど今はまだやらなければならない事がある。だからまだ生かしてくれると有難いけど」



ラドは俺の顔を覗き込み、俺は銃を下ろす。



「やらなければならない事…ってなんだよ。前にもそう言ってたよな?」



「色々とね。君も今、俺がいなくなると困るだろ? こんなご馳走を逃すわけにはいかないだろうから」



俺はお前を食う為だけに隣にいるわけじゃない。じゃぁ、何の為? 殺す為。じゃぁ、今ここで心臓を撃てば良いよ。そう言われてしまえば俺は何と答えるのだろうか。結果が見える会話を頭の中で繰り広げては、溜息を漏らす。何をしたところ直面している問題は解決しない。半ば八つ当たりのようにもみくちゃになって、ベッドにラドを押し倒す。苛立ちをぶつけるように触れ、乱暴にその首筋に噛み付いた。俺がお前を隣に置いているのは食う為だという理由が、自分の感情を否定するには最も最適だ。でも本音は違うと既に分かっている。


はっと息を飲む音が聞こえたが、そのまま血を啜る。温かくて甘すぎるそれは、喉をゆっくりと伝って腹を満たす。少し息を荒くしているラドを見下ろし、その唇に視線を落とした。短く息をする為に半開きになったその柔らかな唇に指を這わせ、端に親指を引っかけて口を開けさせる。鋭い牙は出たままだった。口内を犯すように指を入れると、その長い舌が器用に指を弄ぶ。体温の低いこの男も、口の中は温かい。人差し指と中指で、その舌を挟み、ピアスに引っ掛ける。ラドは俺にされるがまま舌を出すと、それでも余裕そうに口角を上げて溢れる唾液を飲み込んだ。このピアスはエヴァの為に開けたのだろうか。あのビデオでも、エヴァはこれに触れていた。そう思うと腹が立った。だからその長い舌に噛み付いた。血が滲んで溢れ、唾液と合わさり、ラドの熱い息が口の端から漏れている。その舌を噛みちぎろうと思えば出来たろう。きっとこいつは、舌を噛みちぎったところで数時間で治癒して元に戻せるのだろうから。そうすれば、エヴァの影を消せるのだから俺にとっては好都合だった。ようやく虫が納まるだろう。


でも、俺には出来なかった。さんざんバンパイア共を始末してきたのに、ラドの舌を噛みちぎる事も容易でなければならないのに、ラドを傷付ける事に抵抗を覚えてしまったのだ。もう、引き返せない。こくんと甘い血と唾液を飲み込み、その頬に触れる。



「……もう終いか?」



ラドは寄せた俺の掌に軽くキスを落とすと、猫のように擦り寄り、熱をおびた瞳で俺を見上げた。



「なぁ、ラド」



「ん?」



「…エヴァはお前の恋人だったんだろう」



「へぇ。正面切って聞いてしまうのか」



「答えろ」



「…丁度、あのビデオが撮られていた頃、そうだった」



「ビデオで言ってたよな。お前が殺したい実験体を、エヴァは殺したくなかった。だからお前を売り、そしてお前を殺そうとする。…エヴァにまた会いたいと願うなら、地獄を見るだけなんじゃないのか」



ふふ、ふははは、そうラドは白い歯を見せて声を上げて笑った。何がそれほど面白かったのか俺には分からず、眉間に皺を寄せていると、ラドの上機嫌な瞳が俺を覗いた。



「俺があいつに会いに行くのは不安か? 俺が心を奪われて殺されるかもしれないから」



「……」



図星だと返す言葉がなくて何も言えなくなる。



「あの実験体が逃げ出した事をキッカケに、俺とあいつは対立した。あの実験体を守る為にあいつは俺を殺そうと躍起になり、どうしたって俺を消し去りたかった。まさか俺が太陽を浴びても死なないとは最初、思わなかっただろから。…俺はね、記憶を完全に取り戻したわけじゃない。でも断片的にあいつと俺が所謂恋人同士だったのはなんとなく思い出したよ。けれど過去は過去。甘い関係だったのは一瞬で、きっとこの長い年月、あいつは俺を殺す事だけを考えて生きている。俺が、あの実験体を唯一殺せる存在だから。だから俺があいつに心を惹かれる事はもう二度とない。……これが本音。少しは君の中のモヤモヤが晴れると良いんだけど」



俺は深い溜息をつく。どうしたと、ラドは怪訝な顔をした。俺はごろりとラドの横に転がり、天井を見つめる。



「お前は俺をどうしたい?」



「え?」



「こんな風にハンターだと偽って、仮の姿で俺の側に居座って、依存関係を成立させて。そんで自己破滅を望むように、俺に殺される事を願って。最終的に自分を殺す俺と、お前はどうなりたい」



ラドはふっといつものように笑う。



「俺はね、シン。自分が心から惚れた君を守り切る事ができればそれで良い。自分が殺されるその日まで、ずっと側にいる事ができれば、それで」



なんだよ、それ。期待していた言葉とは違った。何を期待していたのか聞かれれば、言えないような事を期待していた。だって言ってしまえば、まるで俺がそう望んでるみたいだから。絶対に言えるわけはないのだけど、それでも期待していた言葉が手に入らず、俺はまた苛立った。



「じゃぁ俺が、恋人作ってお前から離れても、お前は俺を守り切れさえすれば良いのかよ」



ギッとベッドのスプリングが軋み、ラドは俺の顔を見下ろして手を顔の横につく。揶揄うような嫌な笑みを浮かべていて、俺はその顔に見つめられればられるほど腹が立って視線を外した。



「ヘルに恋愛感情はないのだろ。なら、君が恋人を作ることもないはずだけど?」



チッと舌打ちを鳴らすと、ラドは満足そうに笑った。そうしていつものように甘くキスをして、唇を首筋に這わせて俺の怒りを鎮めて腹も満たしてしまう。恋人が出来たと言ったら、こいつは信じねぇんだろうな…。



「君が誰かを心から愛して、それが俺以外の誰かだったら、俺はきっとその現実を受け入れられないのだろうなぁ」



そうラドが言ったのは夢の中か現実か。あまりにも夢と現実の境目が曖昧だった。ふと目が覚めると隣には誰もおらず、俺は少しだけ開いている窓を眺めた。

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