第3話

嘘でしょ……。



全く気付かなかった。



気配どころか、足音1つしなかった。



気付かれないように、その人を盗み見る。



真っ黒のスーツを着ていて、中のシャツまで黒という。



黒い、とにかく黒い。



そして背が……背が高っっ。



2mはあるのではなかろうか。



155㎝のあたし達はおもわず見上げた。



傘で顔は見えないが、とりあえず男の人だということだけはわかった。



スーツだからサラリーマンかと思ったけど、雰囲気は死神に近い。




「ヒマワリ」



「ん?」



「この人急に現れたんだけど」



「マジか」




その割にはすっごい落ち着いてるね、あんた。




「うん。……もしかして◯トロ?」



「なんでだっ」



「痛いっ」




変なことを言うアネモネの頭に頭突きをする。



ファンタジーが大好きな妹はちょくちょくこういう発言をする。



一緒なのは雨とバス停ぐらいである。



そして、あたし的にはト◯ロより真っ黒クロス◯だと思う。




「御期待して頂いてるところ申し訳ないのですが、トト◯でも真っ黒クロ◯ケでもありません」



「いやいや別に期待なんて……!?」



「喋った!!」




喋った!!



てか、聞かれてた!!



あわわっ、ここは謝るべき!?



愛らしいキャラクターだけど、人外のものと間違えたわけだから、謝るべき!?




「私は鬼神です」



「「…………」」




男の人はそれは耳に心地よいバリトンボイスでそう言った。





……え??


突然のカミングアウト。



そして男の人は傘を上げ顔を見せた。

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