第3話 vsホットサンドメーカー
デイキャンプは土曜日にしたので、日曜日は丸一日空いていた。
特に空けていた理由はないのだが、これは結果としては正解だった。
全身が筋肉痛だったのだ。
しばらく体を動かしてこなかったから、全身が悲鳴を上げている。
社会人になってからスポーツとかしてなかったからな。
そんなことを考えながら、コーヒーを飲む。
そういえば、最近アニメを見れていなかったな。
体が痛くて動きたくないし、今日はアニメでも見るか。
せっかくキャンプを始めたんだしユルイキャンプのヤツを見ようかな。
確か、一期は見たんだよなぁ。
見放題プランのサブスクを久しぶりに立ち上げる。
横になって、アニメをひたすら見る。
二期を見終わったが、一期の内容をよく覚えていなかったので、今度は一期を見ていく。
前に見たときは、ただ何も考えずに見ていたが、いざ自分でキャンプを始めてみると見方が変わってくる。
楽しみ方が変わったのだ。
僕は久しぶりのアニメののめりこんだ。
気づいたら夕方だった。
窓から夕日が差し込んでくる。
気づいたらアニメを見終わり、僕はキャンプ動画を見漁っていた。
このホットサンドメーカー、いいな。
ある動画で使われていたホットサンドメーカーに心を奪われた僕はいつの間にかポチっていた。
明日には届くらしい。
なんてすばらしい文明の利器なんだ。
ウキウキ気分で晩御飯の支度にとりかかる。
が、筋肉痛の痛みですぐにそのウキウキ気分は萎んでいくのだった。
次の日の晩、家のチャイムが鳴った。
「お届け物です。」
我が家へようこそホットサンドメーカー君。
くつろぎたまえ。
なんてことを思いながら、段ボールを開いていく。
中には動画で見たホットサンドメーカーがあった。
これは次のキャンプの楽しみができた。
人というものは不思議なもので、一つ楽しい予定ができると、途端に生活にメリハリが生まれるのだ。
僕はこれで何を作ろうかと考えながらその日は眠りについた。
僕は耐えきれなかった。
だからこのような愚行に走ってしまったのだ。
主よ、どうかこんな私を許したまえ。
僕はあろうことか、6枚切りのパンとチーズ、キムチを買っていたのだ。
それも火曜日に。
つまり、キャンプでもないのに僕はホットサンドメーカーを使おうとしているのだ。
おいおいおい。
この楽しみはキャンプまで取っておくのではなかったのか?
脳内の天使と悪魔が僕に語り掛ける。
悪魔がささやく。
いいじゃねえかよ。もう買ってしまったんだ。
やっちまえよ。
欲望のままに作っちまえよ!
ピロリロリン♪
天使が登場する。
このまま休日までパンを置いておくと、カビが生えるかもしれません。
それに、ホットサンドメーカーを使う練習をしておく方がよいでしょう。
…満場一致だった。
脳内の天使と悪魔がジョジョ三部の花京院とポルナレフのようにハイタッチしていた。
パンツーマルミエじゃないんだよ。
それじゃ、作りますか。
まずは、パンの耳を切り落とす。
耳があると、少しだけホットサンドメーカーからはみ出るのだ。
次にホットサンドメーカーの両面にバターを塗る。
こうすることで、パンの表面がカリカリになるのだ。
そして、パンの上にキムチとチーズをまんべんなく載せる。
その上にパンをさらに乗せ、ホットサンドメーカーにセットする。
点火!
片面を3分ずつ焼いていく。
キッチンをバターのいい匂いが充満していた。
僕の空腹ボルテージは最高潮だ。
まるで、ボクシングのゴングのようにタイマーが鳴り響く。
僕はいよいよ、対戦相手と対峙した。
相手はカロリーモンスターだ。
早期決着が望まれるな。
僕はあいさつ代わりに、そいつを一口かじった。
口の中がキムチとチーズの匂いで満ちる。
唾液があふれてくる。
キムチの辛さとチーズのマイルドさ。
お互いが打ち消しあうどころか、互いを引き立てあっている。
まるで、互いが互いのために存在しているかのようだ。
これにはロミオとジュリエットも腰を抜かしている。
先に謝っておこう。
すまん、シェイクスピア!
もう一口、僕は頬張る。
もはや、勝ち目はなかった。
僕の放ったジャブに対してすぐさまそいつはカウンターを放ったのだ。
モロに食らってしまった。
すぐさまファイトポーズをとるが、すぐに美味さの応酬がやってくる。
気がついたら僕は第一ラウンドを終えていた。
セコンドはタオルを投げ込む寸前だったが、なんとか持ちこたえた。
しかしだ、僕は6枚切りのパンを買っていた。
つまり、第三ラウンドまで存在するのだ。
この戦いに、最初から僕の勝機はなかったのだ。
負けじとカウンターを打つが、匂いという名のブラッディ・クロスを受けてしまう。
僕はジョルトカウンターを放つことなく、散ったのだ。
後半ただのボクシングだった気がするが、気のせいであろう。
明日は、口臭ケアを完璧にしなければな。
キャンプのすゝめ ゆったり虚無 @KYOMU299
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。キャンプのすゝめの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
不要なネジ/ゆったり虚無
★3 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
この薄汚れた世界で/ゆったり虚無
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます