第2話 温もり感じる初心者デイキャンプ
まずは、テントを張ろうかな。
そう思い、僕はカバンからテントを引っ張り出す。
1~2人用のテントでドームテントと言われる種類だ。
建てやすく自立式なので、ファミリー用でもソロ用でも幅広く使われている。
うわ、テントってこんなにデカいのかよ?!
それが中身を見たときの第一印象だった。
出来上がりの写真を見て小さい印象を受けていた僕は、商品を間違えたのではないのかと疑ったほどだ。
しかし、実際に取り出して広げてみるとそうでもなかった。
人が眠る場所だと考えると小さいくらいだ。
その小さい場所を作るために僕はこれから大きい苦労をする羽目になるのだが。
このポール、入らないんだが。
2本の長いポールを、テントにあるポールを通す用の穴に入れるのだが、これが中々入らない。
ようやく入ったと思い、対極に位置するポールを固定しようと思ったら今度はそれができない。
要するにこのテントはポールを2本使いドーム状にするのだが、ドーム状を保つための固定がギリギリに設計されているのだ。
もう少し余裕を持ってもいいのではないかとも思うのだが、そうするとテントがうまく張らず、シワが生まれるのでそうもいかないのだろう。
「手伝いましょうか?」
もうとっくに設営を終えていた2人組も男子たちが声をかけてきた。
見ると2人ともガタイが良く、さわやかな笑顔のよく似合う好青年である。
「お願いします。」
変なプライドはいらない。
僕はそう思い、手伝ってもらうことにした。
「テントの設営ってコツとかあるんですか?」
ポールの固定をしてくれている男子に僕はそう聞いた。
「コツか…。しいて言うなら一気に力を入れることですね。」
そう言って彼は、一気にポールを固定した。
「やっぱり筋力がいるんですね。」
僕は彼らのガタイを見ながらそう言った。
すると、もう一人の男子が会話に参加した。
「確かに筋力も大事ですけど、これは完全に慣れだと思います。力の入れ方というか。女性でもできますからね。お兄さんも慣れればできますよ!」
そんな会話をしている間にもテントはみるみるうちに完成していった。
「よし、これで完成!」
すごい。
ものの数分で形になった。
「本当にありがとうございます。助かりました。」
僕は頭を深々と下げた。
「いえ、気にしないでください。俺たちも最初、他の方に手伝ってもらったことがあるのですよ。その方の真似をしただけです。」
そう言った男子は照れくさそうに下を向いた。
中身までイケメンとは…
日本の未来は明るいのかもしれない。
「じゃあキャンプ、楽しんでください!」
そう言い2人組の男子は、自分たちのサイトへと帰っていった。
そういえば名前を聞くのを忘れていたな。
そんなことを思いながら完成したテントを眺める。
これこそキャンプだ!
なかなかいいではないか。
なんてことを思いつつ荷物をテントの中に入れていく。
次は椅子と机だな。
そう思い、早速作業に取り掛かった。
テントに比べると、椅子と机の組み立ては簡単だった。
そんなこんなしているうちに、時刻はすっかり12時を過ぎていた。
昼でも作るか。
とは言っても、カップラーメンなのだが。
昨日買ったシングルバーナーにガスボンベを取り付ける。
これで火がつくはずだ。
これ、ついているのか?
ガスの出る音はしているのだが火が見えない。
少し手をかざしてみると、火の温度を感じ取ることができた。
どうやら青白い火がついているようだ。
しかし風で火が揺れる上に、太陽の光のせいでかなり見えにくいのだ。
ま、いっか。
そう思い、持ってきた水をアルミでできた鍋に注いだ。
アルミの他にもステンレスがあったのだが、あまりに重すぎたので断念した。
鍋を火にかけ、しばし待つ。
今日、買ってきたカップラーメンはカレー麺だ。
某アニメに感化されたわけでは断じてない。
そう、あのピンク髪の女の子のおいしそうな顔に惑わされたわけでは決してないのだ。
これ、誰に対する言い訳なんだ?
鍋から沸騰した音が聞こえる。
カップラーメンの蓋を開け、お湯を入れる。
3分間待ってやる。
そんなグラサンのセリフを思い浮かべながら、僕はスマホのタイマーを起動する。
最近、アニメ見れてないな。
見たいアニメはあるんだけど、見る時間と気力がないんだよなぁ。
正確に言えば時間がないわけではないが。
実際、休日はしっかりとあるし、ネットで見るようなブラックに比べると素晴らしい会社だと思うしなぁ。
アラームが鳴った。
割りばしに手を伸ばしパキッと割る。
きれいに割れたことに満足感を覚えながら手を合わせる。
「いただきます。」
ズズッと一口すする。
口の中が火傷しそうになるが…
うまい。
家で食べるカップラーメンとは別物だ。
キャンプで食べるカレーはおいしいと相場で決まっているのだから当たり前だ。
続けて二口目を口に迎え入れる。
そしてすぐさま汁を飲む。
これがうまいのだ。
暖かい陽光を感じながらカップラーメン、いや、カレー麺を堪能する。
キャンプ、いいなぁ。
そう思いながら、最後の一滴まで飲み干す。
「ごちそうさまでした。」
そう言い僕は手を合わせた。
午後は椅子に座って読書を楽しんだ。
日が傾いてくると少し肌寒くなった。
「帰るか。」
そう言い本を閉じて、片づけに取り掛かるのだった。
次は焚火もしたいな。
そのあと、テントを片付けるのに悪戦苦闘したのは言うまでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます