第44話


「世界初S級冒険者になった相葉優さんです」

「あはは、どうも」

 何故こんなことになったかというと、世界初70階層を突破した男としてS級にしなくてどうするんだと国際会議で決まったらしい。

 俺的にはどうでも良いことだが世界初日本でS級ということで是が非にも参加しろと脅迫めいた招待状が届いたのが先日。

 今日に至りました。


「それではS級冒険者の証としてプラチナ冒険者カードが授与されます」

と言われて壇上に上がる。

「どうも、はじめましてだね!これからも期待してるよ!」

 総理大臣に手渡ししてもらっちゃったよ。

「は、はぁ」

「こっち向いてください!!」

 ハハ、ハ、俺がこんなふうになるなんてな。

 握手をしながら写真を撮られるなんて、爺ちゃん達見てるかな?


 空を見る。


 よく晴れた晴天だな。


 しかも桜が咲いている!


 よし!

「花見に行くぞ!」

「「「「「おー!!」」」」」

「席はヒロシに頼んであるからな!さぁ!行こうか!」

 タクシーで花見のできる公園までいくと凄い人の数だ。

「屋台だぁ!買おうよ!」

 杏が屋台に釘付けだが、

「まずはヒロシのとこに行こうぜ!」

 電話で話しながらヒロシに場所を聞く。

『こっちです!大きな桜の木の下ですよ!』

「お!おお!凄いじゃないか!」

「ちゃんと取っときましたよ!昨日の夜から!」

 夜から一人か寂しかっただろうに。

「偉いぞヒロシ!」

「はい!兄貴!」

「兄貴は無しな?」

 大きな桜の木にピンクの花びらが舞い散ってとても綺麗だ。

「It's so beautiful!!桜はやっぱり日本って感じね!」

「綺麗…言葉にできないくらい」

「…本当ですね」

「…ふぁ」

「久しぶりの花見ですよ」

 ダナ、セシリア、カタリナ、ツクヨ、サヤカも今日は来ている。

「おう!やってるかい!」

「おう爺さん、来てくれたか!」

 スキルボール屋の爺さんも呼んである。

「じゃあ記念写真撮りますよー!あ、お願いします!」

「はい!チーズ!」

“カシャ”カシャ”カシャ”

 と3回も撮ってくれた。

「ありがとうございます」

「いえ、出来ればその写真一枚ください!」

「え?」

「あ、相葉優さんですよね!ファンなんです!」

「あ、ありがとうございます」

 と今度ギルドで渡すことになってしまった。


「まぁいいか!!よーし!乾杯だ!」

「S級おめでとーう!カンパーイ」

「「「「カンパーイ」」」」

「え、ま、まぁ乾杯!」

「「「「あはははは」」」」

 と総勢12名の花見酒だ!楽しくないわけがない!


「おっとっと!」

「いいなぁ!爺さん!若い子に注いでもらえて!」

「おう!長生きはするもんじゃ!」

 と爺さんも上機嫌だ。


「ねぇ、S級カード見せて!」

「ほい」

「あんたもホイホイ渡すんじゃないわよ?」

「すっごーいキラキラだぁ」

「これが最高峰の冒険者カード」

 桜の木の下で空に透かして見ているが、意味ないだろ?

「みんなもすぐ取れるさ」

「無理無理無理無理無理!」

「そうだよ!こんなカードには到底なれないよ」

「はい、返すね」

「おう」

 インベントリに入れる。


「あ、そうだ、ヒロシにお駄賃あげないとな!」

「え!なんかくれるんですか?」

「ほれ、『剣術』のスキルボールだ」

「や、ヤッタァ!俺もこれで剣士になれる!」

 ヒロシはすぐに割るとステータスを確認している。


「ヒロシにはもったいないよ?」

 叶が言ってくるので、そう言えばと、

「あ、そうだ、叶が言ってた通り同じスキルボールを重ねることができたぞ?」

「え?え?!本当に?」

「あぁ、俺の『斬撃』は『斬撃II』になったからな!」

「ヒロシ!さっきのスキルボール渡しなさいよ!!」

 とさっきの『剣術』スキルボールはもうないのだ。

「も、もう使いましたよーだ!」

「く、くそ!『剣術II』になるチャンスが!」

「クックックッ!ワシがやろう!ほれ!」

 爺さんがスキルボールを出すと二人して飛びかかる。


「私が」

「俺が」

「「貰うんだー!」」


“ガッシャーーンッ!”

「あんたら何してんの!!ちゃんと片付けなさい!」


「クックックッ!」

「「「「あははははははは」」」」

 

 楽しい時間は過ぎるのが早いな。


「屋台で買ってきたよー!」

 と追加の酒が入ってきた。

「おう!花見酒から月見酒だなぁ」

「本当綺麗」

「これが日本なんですね」

 セシリアやカタリナも綺麗だと言っている。

 桜の合間から見える月を見て本当に綺麗な景色だと思う。

「も、もう飲めまシェン」

「おう、ヒロシは飲み過ぎ注意だぞ?まだ若いんだからな?」

「そうじゃな、ちと酔うくらいがまた一興」


 酔い潰れたのはヒロシだけで、あとはほろ酔いで気持ちよく飲んでいる。


「ねぇねぇ!こんなイベントならいつでも良いね!」

 杏がそう言うが、

「そうだな、だが一年に一度だから良いんだと思うぞ?」

「そっか!でも夏祭りに月見酒!冬は温泉とか!」

 冬の温泉か、旅館なんかはいいなぁ。

「あはは、冬の温泉はいいなぁ、な!爺さん?」

「おう、そうじゃのぉ!そりゃ楽しみじゃ!」


 今年は楽しみが多いな。ブラックで働いてた自分じゃなくてよかったよ!


「桜最高ーー!!」


 

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