第39話



「ここは俺の街、八大魔将の1人、無手のヴァロン様の領地だ!」

「へぇ、そうなんだ!」

「死ね!!」

“ズガンッ!!”


“ズガンッ!!”


“ズガンッ!!”

 とさすがに当たると痛そうだなぁ。

「行きます!三矢!」

“ストト”

 と矢が刺さるが効いてないな。

「ツクヨ!俺がやる!」

「はい!」

「『斬撃』」

“ギンッ”

 と拳で弾かれる。

「へぇ!さすが無手ってだけあるね!」

「ぬぅ、お前の斬撃など効かぬ」

「じゃあこれはどうかな『斬撃連斬』」

 『斬撃』の連発だ!

「ぬおぉぉぉぉおぉ!!」

“ギギギギギィン”

「ど、どうだ!」

 と弾き返したヴァロンはいい気分で俺のいたところを見るが、

「『猛毒撃』よし!お前はよく頑張った!」

「なっ!こ、この卑怯者め!」

 と足を庇っている。

「ぬうぅぅ!!」

「いやいや毒だからね?死んじゃうよ?」

「な、なぬ!だ、誰か毒消しを持て!!」

「んじゃ!」

「ま、待て!待たぬか!!」

 俺とツクヨはその間に街を抜ける!


「よし!これで追ってこないだろ!」

「さすがです!ユウ様!」


 65階層に降りる階層でバングルをツクヨに渡してイヤーカフをインベントリに入れる。

 ようやく半分だな。


 65階層からは草原に変わっていて、出てくる魔物も変わってくる。

 グラスウルフやレッドマンティスなどだ。

 紫色の太陽は変わってないな。

 道なりに走っていくと城壁が見えてくる。


「ここで宿を取ろうか」

「はい!」

 並んで入るがやはりザルだなぁ。

 荷物検査くらいしかしないのですぐ入れる。

 さて、もう夜も近いので宿に泊まる。

 風呂のあるいい宿だ!

 先に風呂に入れというがツクヨは断固として譲らないので俺が先に入る。


「ふぅ、やっと1人になれたな」

「失礼します!」

「え!ツクヨ!なんで!」

「お背中お流しします」

「そ、そうか、だがそれだけだぞ?」

「はい、ユウ様」

 ゆっくり風呂に浸かって出ると、次はツクヨに入ってもらう。

 シャンプーとコンディショナーの使い方は教えたので、ちゃんとわかっているはずだ。

 

 出てきたツクヨは妖艶で綺麗だった。

「ツクヨ、ほら櫛で髪を」

「はい、ユウ様」

 ドライヤーがあると良かったが帰るまでは我慢だな。

 その後はツクヨがマッサージをしてくれて俺は寝てしまった。


 起きるとツクヨが横で眠っていたのでビックリしたが、まぁ、まだ怖いのだろうな。


 頭を撫でてやると目が覚めたらしく顔を赤くしていた。

「よし起きるか!」

「はい!」

 朝食はハンバーガーを取り出して2人で食べる。流石に何の肉かわからん食事は食いたくないからな。


 宿を出て街をぶらつく、武器屋に入り見てみるが持ち手がデカかったりするので要らないな。


 さっさと次の階層に行ったほうがマシだな。


 街を出てまた直走る。

 前に冒険者がいたが追い抜いて走っていく。

 やはり人と同じで生活があるんだなと感じる。

「ツクヨは魔物が嫌いか?」

「わかりません、人間も同じ様なものですから」

「…そうだな」

 つまらないことを聞いてしまったな。


 次の階層に入る。

 66階層だ。

 ここも同じく平原で冒険者が多いな。

 森も近くにあり良い狩場なのだろう。

 ワイバーンなども空を飛んでいる。

「撃ち落としますか?」

「いや、別に必要じゃないからな」

 街が見えてくるので歩いて街に入る。


「ここは静かだな」

 魔物の気配がないな。

「そうですね、何故でしょうか」

「それはお前たち何も知らない人間が入ってくるのを待ってたからさ!」

 背後から声がして後ろを向くが、姿が見えない?

「くそっ、どこだ?グハッ」

「ユウ様!」

 小指ほどの小さな昆虫のよつなやつだった。

「オラァ!」

 胸ぐらを掴まれて殴り飛ばされる。

「グハッ!」

「く!ユウ様!」

「大丈夫だ!お前が握ってるおかげだな!」

 こいつは手を離していない!

「なに?」

「『獅子奮迅』」

「ゴバァッ!!!」

「くっ、たく、あんな奴もいるのかよ?」

「ま、待ってください!え!嘘?!」

 遠くから飛んでくるのはこいつと一緒の奴らか?

 黒い影になって飛んでくる。


「よくやった!さぁ!我が軍の恐ろしさを思い知らせてやれ!」

「ツクヨ!掴まれ」

 俺の胸に抱き寄せる。

「え!はい!」

「行くぞ!『神速』」

 止まって見えるぜ!剣で斬っていく。

“ボタタタタタタタ”

「な!わ、我が軍の精鋭達が!全軍突撃!!」

「だから効かないって『神速』『サンダーレイン』」

 俺は雷の雨を避けて門まで走ると遠くで悲鳴が聞こえた。

「ったく!あんな奴もいるのかよ、って、ツクヨ!大丈夫か!」

 ツクヨは俺に捕まったまま丸くなって耐えていた。

「は、はい、少し疲れましたが」

 ツクヨをそっと下ろして、

「『ヒール』大丈夫か?悪いな!」

「あんなに速いのですね」

 とまだふらついている様だな。

「まぁな!でも速さはいまのペースで問題ないさ」

「はい!」

 ツクヨも無事で良かった。


 昆虫型の魔物はもう追ってこない様なので、このまま67階層へと向かうことにする。

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