第53話 美雪の正体
「美雪……おまえ生きてたのか?」
レイが美雪に尋ねた。
「も~、レイまで隼人と同じこと言うから」
「隼人と同じって……兄貴に会ったの?」
コトも美雪に尋ねた。
「うん、彼捕まってたから……彼も驚いてたな」
機関銃を触りながら美雪が呟いた。
「美雪……おまえ一体、
今までどうしてたんだよ。
みんな……兄貴がどれだけ心配してたか……」
レイが語気を強めた。
「宮野隊員は、武蔵部隊に所属する戦闘員です」
一人の隊員の声が聞こえた。
「え、美雪が戦闘員?」
「どういうことだよ。美雪説明してよ」
二人の問いに、美雪は小さく息を吐くと……
真実を話し出した。
「私は、武蔵部隊の隊員なの……。色んな組織に
潜入して相手の機密情報を入手している……
スパイ行為と戦闘を得意としていた。
ある時、私は、長期間の潜入捜査を終えて
片陰の街にいる武蔵隊長のもとを訪れた。
その時、隼人に出会い……
そして、私達は恋に落ちた。
もちろん、隼人は武蔵部隊の存在は
全く知らなかった。
武蔵隊長は、あえて彼が部隊の存在に気づく前に
彼を隊長のもとから遠ざけた。
私は、隼人の監視も兼ねて彼と一緒に
過ごしていた。でも、本来我々は、
一般人とは恋愛できない
きまりがあって……」
「一般人と恋愛できない? ちょっとまって……
でも、隼人の母親は……男と出て行ったんだろ?」
「一応、そういうことになってるけど、
実際は違うの。
隼人の母親も違う部隊の隊員だった。
武蔵隊長と大恋愛の末、
結婚して隼人が生まれたらしいの。
隼人の母親は、一緒に潜入した男性隊員と
潜入捜査中に殺害された……それが真実よ」
「そうだったのか……」
レイが呟いた。
話を続ける美雪……
「隼人と一緒の時間を過ごすうちに、
私は、どんどん彼のことが好きになった。
そんなある日、副長から呼ばれて……
隼人のもとを去るように告げられた。
上官の命令は絶対なの。私はそういう組織に
いるのだから……自由な恋愛は許されない。
でも、武蔵隊長が私に言った……
この隊を辞めて隼人と人生を歩むかどうか
自分で決めろと……
そして、私は、連れ去られたように情報操作された。
私は、賭けをした……
もし、隼人が私を助けに来てくれたら、
彼のもとにいこうと……
でも、彼は助けに来てはくれなかった……」
「それは……武蔵さんが……」
「わかってる……
それ以上はもう言わなくていいよ。
でも、今、私は十分幸せだから、それでいいの」
美雪が微笑んだ。
「美雪……」
コトが彼女を抱きしめた。
「コト……ありがとう」
美雪が呟いた。
「宮野隊員、そろそろここも……」
偵察していた隊員が戻ってくると
美雪に囁いた。
表情を変えた美雪が……
「今から、このフロアにいる
敵の傭兵全てを制圧し、
55階から58階までの
ラボ内部をすべて破壊する」
彼女の言葉にすべての隊員が銃を手に取り
立ち上がった。
ガチャ……。
ドアが開くと、隊員たちは一斉に
各フロアに散って行った……。
美雪は、レイとコトに微笑むと、
ラボの最重要機密事項が眠る
一番奥の部屋を目指して走り出した。
レイがコトを見ると、
「俺等も行くか……」
「そうだね……役に立つかわかんないけど」
ふたりは、銃弾ベルトを身体に巻き付けると
彼女の後を追った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます