第43話 ドリーム・タウンの闇
ドリーム・タウン港街の一角にある倉庫。
黒服を来た男達が密輸貿易の準備で
慌ただしく動き回っていた。
一番奥の椅子に座る鬼神透……通称K……。
いつもとは異なり険しい表情を見せていた。
彼の片腕で忠実な部下、村山が彼に話かけた。
「どうしたK、いつも以上にご機嫌斜めだな。
それに、そこのごみ箱に美味しそうなショコラが
捨ててあったぞ。
いいのか? これって婚約者の鈴香様からの
贈り物だろ?」
「別にかまわないさ……
食べたければおまえにやる……
好きなだけ食べろ」
「そう、じゃ、いただきます。
うん! 旨いな~このショコラ。
どこの会社だ? ん? これって……」
「そうだ! あの男……神谷隼人が
この会社の社長になって、この街に現れたんだ。
それも、いつの間にか鈴香さんに接近してた……」
「そうだったのか……
あいつ本当にのし上がってきたのか……」
村山が呟いた。
「アイツは……鈴香さんを取り戻して、
我々の計画を壊しに来たに違いない」
震えだすKに村山が、
「K、しっかりしろよ! 大丈夫だ。
会長にはまだ彼の存在を知られてないんだろ?」
「あぁ、こちらも早く計画を進めていかなければ。
それには、あの男が邪魔なんだよ。村山……」
「わかってるさ。K心配するな……
後は俺等に任せろ……おまえは、鈴香さんの
心をしっかり繋ぎ止めておけ。
それと、彼女からの贈り物は一つくらいは
食せよな……」
と言い残すと、村山は数人の男達を連れて
倉庫から出て行った。
ドリーム・タウンで一番高いタワーの
最上階に鬼神と村山がいた。
遠山財閥会長、鈴香の父、
遠山が二人に言った。
「最近、この街と世界を相手に手広く
ビジネスを展開している。
この会社を知ってるかね?」
遠山が、タブレットを手渡し、
隼人の会社のデータを見せた。
「は、はい。情報は私の耳にも……」
「そうか……実は、鈴香もこの会社の
商品を物凄く気にいってるようなんだよ。
君はどう思う?」
「はい、私も鈴香さんからここのショコラ
をいただきまして、とてもいいお味でした」
「そうか……。そこでだ、私も短期間で
ここまでにのし上がってきた……
彗星の如く現れた将来有望な
若社長をこの目で見てみたいと思ってな。
後日、ここに来るように伝えてほしい」
「神谷社長をですか?」
慌てる鬼神……
「なんか、問題でもあるのか?」
「い、いいえ、何でもありません。
私も楽しみです」
鬼神が呟いた。
鬼神の言葉を聞いた遠山は
村上の顔を見ると、
「村上、彼に連絡を取ってくれたまえ」
と言った。
「かしこましした。直ちに……」
と冷静な言葉で遠山に返事をすると、
一礼をして部屋から出て行った。
部屋に残された鬼神と遠山……
鬼神が口を開いた。
「会長、お願いがあります」
「どうした? 改まって……」
「そろそろ、鈴香さんとの結婚を
お許しいただけないでしょうか?」
「また、急にどうしたのかね」
「鈴香さんと婚約してから、
もう3年です。
重要な事業も任せて頂けるようになり、
とても光栄に思っていますが、
でも、これ以上、待てません。
私は、鈴香さんを心から愛しています。
彼女と共に人生を生きていきたいのです」
涙目の鬼神が遠山に訴えた。
「しかし、鈴香はまだ、定期的に
治療が必要なんだろ?
今も、月に注射を数本打ち続けていると
聞いたが……」
「それは……」
口ごもる鬼神。
「君は、優秀な男だ。一人娘の鈴香の
結婚相手は君しかいない……と私も妻も
そう思ってる……だからこそ、嫁に出す時には
健康な身体に戻して嫁いでもらいたいんだよ。
君に治療中の娘を差し出すわけにはいかない」
遠山が呟いた。
「会長、私は彼女の身体が治療中でも
かまいません!」
語気を強める鬼神。
「まぁ、いい。この話はまた後日……」
そう言うと遠山は部屋から出て行った。
部屋を出て廊下に立つ鬼神は
拳を握りしめるとポケットから
スマホを取り出し何処かに電話をかけた。
「計画を予定より早く進める。
皆にそう伝えろ!」
と語気を強めて指示を出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます