第40話 夕暮れに
その日の夕暮れ……
イベントの会場を片付ける三人組。
「はぁ~疲れた……」
「本当。立ち仕事は……それに、
屋外での仕事は、性に合わない……」
イケメンパティシエと美人スタッフ
が交互に呟いた。
ズボンのポケットに手を突っ込み
高くそびえ立つタワーを見つめる
男性……
それは、ショコラ会社、
代表取締役社長、神谷隼人の姿。
パティシエとスタッフの姿に変えた
レイとコトが彼のもとに歩み寄ると、
「兄貴……彼女、俺等のこと忘れてたね」
「驚くほどに綺麗さっぱり……」
「あぁ、でも、元気なのはわかってよかった。
これからだよ……
俺は、少しづつあのタワーに近づき、
必ず最上階まで行き着いてみせるさ」
「隼人、大丈夫なの? 裏組織もいる中で……」
「心配しなくていい。大丈夫だよ」
「それにしても、突然連絡してきたと思ったら
パティシエやれなんて……慌てて、コトの店の
厨房のおばちゃんに仕込んでもらったけどさ。
あのおばちゃん何でも出来るんだから……
驚いたよ……」
「でも、流石隼人。ショコラ会社なんて……
女性が飛びつく物をエサに事業展開して、
この短期間でのし上がるなんて……」
「まだまだだよ。それより、レイ、コト
今日はありがとうな……」
「兄貴、一人で大丈夫か?
また、いつでも連絡くれよ。
すぐに駆け付けるからさ」
「そうよ。ヒカルを取り戻したいのは
あなただけじゃないから……」
「わかってるよ……」
隼人が微笑んだ。
「じゃあね兄貴……」
「あぁ、またな」
「隼人、死なないでね」
「死なね~よ」
隼人に短い言葉を贈ると、
レイとコトはドリーム・タウンを
後にした。
夕陽が差し込む広場には、
ショコラ会社のキッチンカーと
その脇に佇む隼人の姿……
夕陽が彼の身体に当たると、
細長い影がタワーの方向に勢いよく
延びていった。
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