第35話 彼女のもとに
数週間が経過し、歩くことが
できるまでに回復したレイ……
今日は、久しぶりにドクターから
外出の許可が下りた。
コトの部屋に準備された豪華な
料理にゴクっと唾を飲んだ。
「すげぇ~ご馳走。コト、ありがとう」
喜ぶレイに、顔を見合わせた隼人とコトが
微笑む。
「いただきま~す」
三人は、料理を食べ始めた。
久しぶりに三人が揃い、穏やかな時間が
戻ってきたような雰囲気に
時間はあっという間に過ぎていく……。
片手にグラスを持った隼人が、
窓辺に立つと、遥か遠くに見える、
あの街を見つめた……。
隼人の後姿を黙って見つめるレイとコト。
無言であの街を見つめていた隼人が
振り向くと、
「俺……。明日の朝、この街を出るよ」
隼人の言葉に驚くふたり……。
「街を出るって……何処に行くの?」
コトが隼人に詰め寄った。
「隼人は、遥か遠くを見つめると、
あの街だ……。
俺は、この街を出て、ドリーム・タウンに行く」
そう呟いた。
「ヒカル……ヒカルのことが心配なのね」
「あいつの状況を知った今。あいつを……
ヒカルを助け出せるのは、俺しかいない。
彼女が記憶をすべて消される前に、
俺が彼女を救い出す……」
「危険よ。隼人一人では危険すぎる。
私は反対よ……」
泣きながら、興奮するコトをなだめるように、
優しい眼差しになった隼人は、
「コト……俺、後悔したくないんだ。
あの時みたいに……」
と呟いた。
隼人の言葉を聞いたコトは、
涙を拭くと、
「どうせ、止めても行くんでしょ?」
と呟いた。
微笑む隼人に、
「わかった。でも、死なないで……」
と隼人の目を見つめたことが微笑んだ。
「じゃあ、兄貴の門出? じゃね~な。
兄貴の無事を祈って乾杯しよう」
レイがグラスを手に取った。
そして、三人は、夜遅くまで飲み明かした。
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