第28話 心配いらないよ

 部屋に戻って来た

隼人、ヒカル、レイの三人……。

 「ヒカル、髪の毛……

もとに戻してこいよ」

 隼人が、カラー材の箱を彼女に

手渡すと、ヒカルは浴室に入って行った。


 「兄貴、明日、ヒカルをあの男の

もとに返すの?」

 レイが隼人に言った。

 「あぁ、ヒカルを連れていかないと、

コトが戻って来れない。

 あの男が今のところ、ヒカルに

危害を加えるとは思えないんだ。

 でも、コトは違う……

早く助け出さないと、何か嫌な予感が

するんだ。

 とにかく、今はコトを優先する。

その後は……」

 

 「その後は? どうするんだよ。兄貴」

 「どうもしねぇ~よ。ヒカルも婚約者の

もとに帰れるんだから、いいじゃないか。

 心配いらないよ……」


 ヒカルが浴室から二人のもとに

戻って来た。

 「あ! 髪の色もとの黒髪に戻ったね」

 レイがヒカルを見るとすぐに声をかけた。

 「うん。久しぶりの黒髪、どうかな?」

 「良く似合ってる……っていうか、ヒカルは

最初会った時に戻っただけじゃん」

 レイが笑いながらヒカルに言うと、

黒髪を触りながらヒカルが微笑んだ。


 隼人が、ヒカルの前に歩み寄ると、

 「ヒカル……心配いならいよ。

 本来、おまえがいる場所に戻るだけだから。

 鈴香として……」

 と優しい笑顔で呟いた。

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