第25話 人質
目隠しを取られたコトが目を覚ますと、
大きなガラス越しから朝陽が差し込んできた。
「眩しい……」
思わず手を
「目が覚めたようですね」
ゆっくりとコトのもとに歩み寄る
Kの姿に思わず、ベッドから起き上がるコト。
真っ白いシーツの上にできたしわを見ると、
Kの目を見つめ、
「私に何かしたんですか?」
と聞いた。
コトのからの質問に、微笑んだKは、
優しい口調でこう言った。
「そうですね。しいて言えば、
昨日ここに来る途中で飲んだ珈琲の中に
睡眠薬を少々……ぐらいでしょうか。
大丈夫ですよ。
私はあなたに指一本触れてませんから……。
安心してください。
この先も、あなたの身体に触れることはない」
Kの言葉を聞いたコトハは、ベッドから
おりると、大きなガラス窓の方へ歩いて
行った。
ガラスに両手をつけて、窓の外を見たコト、
眼下に広がるビルの群れ……。
そして、行き交う人々と道路を走る
高級車が見えた。
「ここは……何処ですか?」
窓際に立つコトの隣に立ったKが、
「そうですね……ここは、あなたが
いた街ではないってことですね……」
隣に立つKを見たコト……
ふと遠くに、かすかに見える何かを
見つける。
「わかりましたか? ここが何処か」
「……」
何も答えないコトに向かって、
「ここが何処かお分かりのようですね。
流石コトさんだ」
優しい微笑みを見せていたKの顔が、
急に冷酷な表情に変わった。
そして、冷静な口調で……
「コトさん、あなたには今日からここで
生活をしていただきます」
「え? どうして?」
「そうですね……人質とでも
言っておきましょうか……」
「私が人質?」
「はい、そうです。少なくとも、
私が探している人をここに連れて
来ていただくまではね……」
Kはそう言うとコトの手を取り、フカフカの
ソファーに座らせた。
コトをソファーに座らせたK……
彼も彼女の隣に座り合図をすると、
自動ドアが開き村山が部屋に入って来ると、
「コトさん、必要なものは、
全部揃えてありますので、
ご自由にお使い下さい。
食事はお運び致します。
何か必要なことがあれば、この者たちに
お伝えください」
村山の隣に二人のスーツ姿の男女が立った。
彼の隣に立つ男女の姿に驚くコト……
「驚かなくてもいいですよ。この者たちは、
あなたを守るボディーガードですから」
「私を守る? 誰から……」
「そうですね。あなたを取り返しに来る
ネズミどもから……でしょうかね。
心配しなくても大丈夫ですよ。
この者たちは元傭兵だったので、もしもの時には
そのネズミを射殺することもできるんですよ」
彼女の耳元でKが
「あなた……」
「おや? なんでしょうか? そろそろ、
そのドレスを脱いでもらいましょうか……
この街にふさわしい服をご準備していますので」
そう言うと、Kは立ち上がり自動ドアに向かって
歩いて行った。
自動ドアの前に立つKと村山……。
村山がコトの顔を見ると、
「コトさん、このドアはご自分では
開けることはできません。
くれぐれも変な真似はしないでくださいね」
と言い残すとKと村山、そして二人の
元傭兵は部屋から出て行った。
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