第17話 隼人の女

 「ヒカル、そんな顔するなよ。それより

おまえこそ、大丈夫なのかよ?」

 自分の部屋のベットに横になった隼人が

ヒカルに尋ねた。

 「私は……大丈夫。ただの頭痛だから」

  彼女がそう呟いた。


 「まったく、兄貴が羨ましいよ。

 コトにヒカルちゃんに、いい女二人に

心配されて」

 口を尖らせながらレイが言った。


 「隼人、あんまり無茶しないで。私心配で

心配で。あなたまでいなくなったら私……私……」

 隼人の手を握りしめるコト……。


 「コト、大丈夫だよ。俺はいなくならないよ。

 心配かけてごめん……」

 と隼人が優しく微笑んだ。


 「……てなわけで、今夜は俺が兄貴を

看てるから、心配しないで。二人はもう遅いから

帰ってゆっくり休みなよ……」

 レイが言った。


 「コト、ごめんな。店休ませて……」

 隼人が呟いた。

 「いいのよ。たまには……店長にも連絡済だから

問題なし! じゃあ、ヒカルちゃん、帰ろうか」


 「はい……。じゃあ、隼人さん、レイさん、

おやすみなさい」

 そう言うとヒカルとコトは彼女の部屋に戻って

行った。


 路地を歩くヒカルとコト……。

「あ、あの……コトさん、ごめんなさい。

私のせいで、隼人さんがケガして……」

 すまなさそうにヒカルが呟いた。

「いいのよ、気にしないで。隼人もほっとけ

なかったんじゃないのかな? ヒカルちゃん、

彼の彼女、美雪になんとなく似てるから……」


「彼女さんに? その彼女さんは今何処に?」


「美雪は、もうこの街にはいないの……

隼人と美雪が知り合って、ふたりは愛し合って

二人で生活を始めたばかりの頃だった。

 ある日、美雪が悪い奴らに連れ去られて、

どこのどいつかわからない奴等に

売られたことがわかった。

 隼人は、武蔵さんに美雪を探すように

懇願したが、武蔵さんはそれを

受け入れなかった。

 それからよ……隼人が人が変わったように

なったのは……

喧嘩っ早くなってね……

だから、彼はいつもどこかしら傷だらけなの。

 今回無意識にあなたを助けたことは、

昔守れなかった彼女に対する罪滅ぼしなんじゃ

ないのかなって……。あっ! このことは、

聞かなかったことにしてね。隼人嫌がるからさ」

 

 悲し気な表情をたコトがヒカルを見つめた。

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