第13話 交換条件

 興奮するコトを椅子に座らせた隼人は、

コトに昨日から起こった出来事を

話して聞かせた。

 彼女が記憶を失くしていることも……。

 隼人から一部始終を聞いたコト……

彼の隣に座るヒカルを見ると、

 「事情は……わかった。でも……」

 口をつぐむ……。

 「コト、どうしたんだよ? 

 事情はわかってくれたんだよな?」

 隼人がコトに聞いた。

 

 「コトは、ヒカルちゃんが兄貴の

部屋にいることがイヤなんだよな……」

 レイが言った。


 「ん? どういうことだ?」

 「兄貴は、本当にそこんところ鈍感だよな」

 「どういう意味だよ……」

 「だから、コトは兄貴が女の人と一緒に

ひとつ屋根の下にいることが心配なんだよ。

 だって、兄貴はモテ男だから……」

 レイが笑った。

 「なんだ、コトそのくらいで……

 俺は、ヒカルをどうこうしようと思って

ないよ」

 

 隼人の言葉を聞いたコト……

 「だって……隼人が女の人を

家にいれてるって聞いて、だから私

ついかぁ~ってなって……」

 と彼女が呟いた。


 彼女の言葉を聞いていたヒカルは、

 「コトさん、心配しなくて大丈夫ですよ。

 私、隼人さんから一度店に売られたんだから。

その程度の者なんです。だから、心配しないで」

 コトの顔を見たヒカルが優しく微笑んだ。


 「売られたって……そんな露骨に言うなよ」

 「だって、本当のことでしょ?」

 「まぁ、それは……そうだな」

 「だから、コトさん大丈夫だよ」


 「でも……さ、このまま、ヒカルちゃんが

兄貴の家で暮らし始めると……おお、怖い」

 自分で両腕を掴んだレイが身震いをする。


 「あぁ~、じゃあコト、ヒカルをおまえの

部屋でしばらく預かってくれるか?」

 隼人の突然の提案に驚くコトだったが、

ふぅ~っと溜息をつくと、

 「わかったわよ。この人が隼人の部屋に

いるよりはいいかもね。そのかわり、隼人

条件がある……」


 「条件? なんだよ。身体はだめだぞ」

 「えぇ~、なんで? まぁ、それは諦めるけど、

その代わり、お店に顔を出して。私に会いに来て!」

 「仕方ないな……。わかった約束するよ」

 「やった!」

 笑顔になるコト……。


 「ヒカルちゃん、よかったね~。コトの部屋、

ここより断然イイからね。なんせ、コトは、

この街一番の場所に住んでるんだから……」

 レイの言葉を聞いたヒカルは、椅子から

立ち上がるとコトの前に立ち、

 「コトさん、お世話になります。よろしくお願いします」

 と深々とお辞儀をした。


 横を向いたままのコトも、

「え……っと、こちらこそ、ヨロシクね」

 と小さな声で呟いた。


 こうして、ヒカルは隼人の部屋を出て、

コトの部屋で過ごすことになった。

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