第11話 足音の正体 

 ドアが開くと同時に、ヒカルを抱き寄せ

息を飲む隼人……。


 ゆっくりとドアが開き、一人の男が言葉を発した。

 

 「兄貴~。今まで、何処にいたんだよ。

 心配したよ~。街中にオーナーの手下が

いてさ、兄貴のこと探してるんだもん……。

 兄貴、なんかしたの?……てか、誰その人」


 「レイ……おまえか……、それよりおまえ、

後つけられてないよな?」


 「大丈夫だよ! この場所は絶対見つからないよ。

それより、誰、この超上玉の女性は……」

 「馬鹿! おまえ、上玉なんて言うなよ」

 「は? 店に紹介するんじゃないの?」

 「違うよ……、この人は、その……

路地からいきなり出てきて、倒れこんで、

俺がそれを拾って……店に紹介しようと

連れて行って、一旦は、その……売ったんだけど、

オーナーから連れ戻して……で、今に至る……」

 と隼人がレイに説明をした。

 

 隼人からの説明を聞いたレイ……

 「ふぅ~ん、そうなんだ……」

 とニヤリと笑った。

 「なんだよ。笑うなよ! レイ」

 

 「兄貴、どうしたの? 動揺しちゃって。

 まぁ、そういうことなら……俺の名前はレイ、

兄貴の弟分、といっても血は繋がってないん

だけどね。ガキんときから一緒に育ったというか。

よろしくね……っと、君の名前は?」


 「えっと……私の仮の名前は、ヒカル。

よろしくお願いします」

 ヒカルが優しく微笑んだ。


 「仮の名前?」

 少し驚いたレイに、隼人が言った。

 「彼女、記憶がないんだ。自分のことが

わからないみたい。だから、俺が一応名付けた」


 「ふぅ~ん、そういうことね。でもさ兄貴、

ヒカルちゃんってどう見ても、この街の住人じゃ

ないよね? この身なりと雰囲気……」


 「あぁ、そうだな。彼女が何者なのか

確かめないとな……。それと何故この街に

紛れ込んだかも……。レイ、協力してくれ」


 「もちろん! 兄貴の命令なら

俺は何でもするよ」


 「サンキュ……レイ、でもヒカルのことは、

内緒にしておいてほしいんだ。オーナーとも

ちゃんと話つけないといけないし……」


 「わかったよ兄貴、でも……」

 「なんだよ」

 「このこと……もう一人……

絶対に言わないといけない人が……」


 「え? お? あぁ……そうだな」

 「一人だけ、仲間外れにされたって、

それこそ街中に言いふらされるよ……だから」


 「ああ、わかったよ。明日にでも言うから……

レイ、明日の朝、もう一度ここに来い。

 もしもに備えて……」


 「わかったよ。それより、兄貴あれ……」

 レイが指をさした先には、疲れ果てたのか

ベッドに横になり安心しきった顔で

スヤスヤと眠るヒカルの姿。


 「あぁ~あ、あんなに無防備で眠っちゃって。

これじゃ、手もなにもだせないね……」


 「馬鹿! そんなんじゃね~よ」

 「じゃあ、兄貴また明日。おやすみ」


 そう言うと、レイは隼人の部屋を出て行った。

 

 ヒカルの寝顔を見ながら、優しく微笑む隼人、

裸電球のスイッチをオフにすると、暗闇になった

室内に窓からかすかに入るネオン街から放たれる

光……。


 隼人はソファーに座ると、そのまま横になり

毛布を身体に巻き付け眠りについた。

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