第6話 裏腹
ヒカルを連れて歩く隼人、
この街に似合わない雰囲気の女性を
連れている隼人に街の住人たちが
好奇の眼差しを送る。
行き交う人々の脇には、沢山の
店が建ち並び、客引きの男の巧みな
誘いに顔を綻ばせ店内に入っていく男達。
ここは、陽の当らない街……。
そして、欲望とお金が渦を巻くように
絡み合う……。
片陰……の街……。
隼人が、古びたビルの前で足を止めた。
ネオンの光を放つビルは、古さと弱さを
隠すようにネオンで着飾ったようにさえ
見える。
「着いたぜ」
隼人は一言、言葉を発するとヒカルの
顔を見て、ビルの中に入って行った。
このビルのオーナーという男に紹介された
ヒカルは、オーナーに軽く会釈をした。
男は、全身に黒い上下のスーツをまとい
ヒカルの前に立つと、彼女の全身に鋭い
視線を送ると優しい笑みを浮かべ、
「なにも、心配することはありません。
しかし、あなたのような美しい方は
はじめてだ。
私は、少し隼人君と話があるので、
ここでしばらくお待ちください」
と言うと、ヒカルを応接室に案内し、
そこで待つように言った。
応接室でひとり待つヒカルのもとに隼人が
戻ってきた。
「オーナーさん、いい人みたいだね。
優しそうで……三食付で部屋と仕事まで
紹介してもらって。隼人さん、ありがとう」
満面の笑みで隼人にお礼を言うヒカル。
ヒカルの汚れをしらない無垢で、
まるで天使のような微笑みに
隼人は、オーナーとのやり取りが
頭をよぎる。
オーナーから別室に連れて来られた隼人。
優しい微笑みを浮かべながらオーナーが
隼人に話かける。
「いやぁ~隼人君、上玉だよ。彼女はきっと
売れっ子になって、店の稼ぎ頭になることは
私が保証する。いい子を紹介してもらって
感謝するよ。仲介料も弾ませてもらうよ」
と言うと、隼人の前に札束を置いた。
「そうですか。それはよかった。
こちらこそ、ありがとうございます」
隼人は目の前に置かれた札束を掴むと
上着のポケットに入れた。
「いやぁ~、しかし、この街にもあんな
清楚で上品そうな女がいたんだな。
まるで、あの裕福な街の住民が
紛れ込んだようだ。
下手すれば、金持ちに
買われていくかもな。
いずれにせよ、我々のもとには
金が舞い込んでくる」
隼人への感謝を表すヒカルを前に
隼人は、煙草に火をつけ、天井に煙を吐きながら
話すオーナーの言葉を思い出す。
「じゃあ、俺行くから。可愛がってもらいな」
そう告げると隼人は、ヒカルのもとを去った。
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