第3話 出会い

 「隼人、元気そうだな」

 彼の養父、神谷武蔵が声をかけた。

 「ああ、親父こそ元気そうだね。

 今の奥さん、二十歳も下なんでしょ?

 お盛んでなによりです」

 隼人が微笑んだ。


 「おまえを呼んだのは他でもない。

 最近、この街にもよそ者が入って来ている

ようだ」


 「へぇ~、この陽の当らない街にも

よそ者が来るようになったんだ」


 「よそ者に好き勝手にさせないように、

わかってるな?」

 武蔵は低いゆっくりとした口調で言った。


 「わかってるよ。俺も気がけておくよ」

 そう言うと隼人は武蔵のもとを後にした。


 

 夕暮れ時……

西の空が、橙色に染まる頃、

一足先に闇夜になる片陰の街に

ネオンの灯りが一斉に灯り出す。


 隼人は、ネオンがひしめく街中を歩く……

そして、いつしか街外れの路地街に辿り着いた。

 彼が後ろを振り向くと、ネオンの光が今夜も

キラキラと男達を誘う。


 煙草を吹かしながら、隼人はその光景を

ただ、ぼぉ~っと眺めていた。

 すると、ドサ……という音とともに

路地の暗闇から一人の女性が現れ

隼人の前に倒れ込んだ。


 「ん? なんだこの女? お~い

おまえ、大丈夫か?」


 隼人は動かない女性を抱き起こすと、

声をかけた。

 隼人の腕の中で眠る女性は、

黒髪の色白でか細く、清楚な色の

洋服を着ていた。

 彼は、女性を見ながら、

「あぁ~ん。この街の者じゃないな。

 親父が言ってたよそ者のたぐいなのかね?」

 そう呟くと女性を抱きかかえそのまま

来た道を歩きだした。

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