第7話 拠点作り・破

side アルマ


ハッと俺が我に返ると、目の前には底がまるで見えない奈落に繋がってると言われても納得してしまいそうな大穴ができていた。


(……とんでもないな。)


『大量の存在力を獲得しました。摂取した存在力が膨大のため、計算に時間がかかっています………完了。存在力が規定値に到達しました、進化します。』


(なっ!?…ぐぁ…!)


まさか天井に張り付いているこんな状態で進化することになるとは思いもしなかった俺は眠気と共に天井から剥がれ落ち、奈落の底に落ちていった。


────────────────────────


(……生きてる。)


『おはようございます、マスターアルマ。』


(おかげさまでな。)


呑気に挨拶してくるシエルに俺は皮肉たっぷりに返す。


『お褒めに預かり光栄です、ステータスを確認なさいますか?』


(皮肉に皮肉で返すんじゃな……まぁいいか、頼む。)


俺はシエルが皮肉で返してきたことに驚きつつ、仲良くなってきた証拠として考えることをやめた。


『ではステータスを表示します。』


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名前:アルマ


種族:甲虫帝王/特異種/成蟲/前期

成長度:0%


固有技能

・甲帝

・シエル

・王雷

技能

・金剛殼

・同化

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(…シエルが支援システムじゃなくなってる、シエルがやけに人間臭くなってきてるのはこれが影響してたのか…糸は使えなくなったのか?)


『成蟲になったことで糸を生成する器官が消失しました。』


(なるほど、糸は体質によるスキルだったのか…この同化ってのは?)


『擬態が進化したUCアンコモンスキルです。完全に風景に同化し、臭いも感じることがなくなります。』


(とんでも隠密スキルじゃねぇか…!!)


俺はそこまでスキルを確認すると、周りを見回す。

全く見えない暗闇なのだが何故かどこに何があるか分かる。


(なんだこれ…不思議な感覚だな。)


進化したことで感知能力が大幅に強化されています。』


(なるほど…これはいいな。)


眼が見えないのに見えているという奇妙な感覚を面白がりながら周囲をグルグル練り歩く。


(そういや、ここは?)


『件の洞窟にマスターが開けた大穴の底です。』


(俺が眠ってた期間は?)


『6ヶ月になります。』


(……は?)


俺の脳がシエルが言っていることを理解することを拒んだ。


──1時間後──


『落ち着きましたか、マスター。』


(なんとか…いや、正直まだ困惑してる。こんな大穴が開くほどの一撃なら余波もかなりのものだったはず、半年もの間放置されていたのは何故だ?いや、調査員は既にここに来ていたのか?なら何故俺は生きている?)


『落ち着いてくださいマスター、ひとつずつお答えします。まず結論として、この6ヶ月間ここには何者も近寄ってはいません。理由としてはマスターの放った獄雷ヴァナ・ボルトの余波で大気に超高濃度の魔力が滞留し、この近辺は生物の住めない地となりました。』


(マジか……戻るのか?)


『これは推測ですが、元通りにはならないと思われます。』


(そう、か…)


俺はシエルの言葉を聞いて、自分が住んでいた森が自分の手で不毛の地となってしまったことに少なからずショックを受ける。


『ですが、現在滞留している高濃度の魔力が馴染めば、より実りのある森になると思われます。』


(ッ!!ホントか!?)


『幸いなことにマスターは以前にも何度か森の中で高威力の魔力攻撃を放っています。そのおかげで、今回の獄雷による余波を受け止めるだけの下地が出来上がっていた模様です。』


(そういうことか…良かった…)


俺の中に安堵が広がっていく。

まさかこんなにもこの森を気に入っていたとは、我ながら驚きだ。


『ですが、良いことばかりではありません。』


(というと?)


『この地に高濃度の魔力に馴染むということは、そこに住まう生物もそれに比例して強靭になるということです。つまり、弱者は淘汰されます。』


(…俺は弱いってことか?)


『その通りです。私はマスターが弱者であることに遺憾を覚えます。強くなってください、マスター。』


ここまで発破をかけられて、応えられないなんて有り得ないだろうが。


(──当たり前だ、俺がこの森で最強になってやる。)


ただなんとなく異世界で生きていた俺に目的ができた。


冒険者もモンスターも関係ない。


俺がこの森だけじゃない、どうせなら誰にも負けないくらい強くなってやる。


『それはそれとして拠点は大穴ここにしましょう。』


(………)


随分生意気になったなぁ…コイツ。

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